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日本陸上競技連盟史

2010年度

2010年度
平成22年4月~平成23年3月

2度福島の笑顔咲く広州
アジアの頂点に

 この年のメインの国際大会は中国・広州で開催された第16回アジア大会。その代表選考会は、6月4日~6日に香川・丸亀競技場で第94回日本選手権、その翌週に分離開催となった日本選手権混成(6月12日~13日/神奈川・等々力)が最終で、アジア大会まで5ヵ月もの間隔が空く日程となった。2年後のロンドン五輪を見据える若い登り龍たちを中心に、日本選手たちは夏季強化期間を工夫するなど、異例の長いシーズンを走り抜いた。

 アジア大会を含め、この1年の陸上界を明るく照らしたのは、福島千里(北海道ハイテクAC)の存在だ。アジア大会は左足首をテーピングで固めた状態で出場し、100mは100分の1秒差の戦いを制して日本選手44年ぶりの頂点へ。200mは前半のリードを守り切る展開での勝利。日本選手では初、大会史上3人目の100m、200m2冠の偉業を成し遂げた。開拓者ゆえ常に「速さ」をクローズアップされてきた福島が、勝負強い一面を見せた大会である。

アジア大会 福島千里 ©月刊陸上競技

 強さを発揮したのがアジア大会なら、速さを見せつけたのはシーズン前半だった。1つが4月29日の第44回織田記念(広島・広島広域)の100mで11秒21(+1.7)の日本新。2つめは5月3日の第26回静岡国際(小笠山総合)200mの22秒89(-0.2)。福島が成し遂げた数ある偉業のうち、100mでの生涯記録、および日本女子史上初の22秒台が2010年だ。

アジア大会 福島千里 ©月刊陸上競技

男女そろってやり投金メダルの快挙

 アジア大会での残る2つの金メダルは、男女のやり投だった。女子の金は海老原有希(スズキ)。3投目にセカンドベスト&シーズンベストの59m39を放ちトップに躍り出る。優勝が決まった後の6投目、集中を保った海老原は60m超えのビッグアーチをかけた。日本記録を9年ぶりに塗り替える61m56、そして7大会・28年ぶりの日本勢金メダル。海老原はこれまでも、その後もビッグゲームに滅法強く、2015年の63m80まで4度、日本記録を塗り替えた。その一つ目である。

 男子は自己ベスト83m15を放った村上幸史(スズキ)。日本選手団の主将として、男子の金メダルがゼロで終わるかどうかの瀬戸際で、その右腕がうなった。前年の世界選手権で銅メダルを獲得した村上は、4月に国内自己最高の82m49、日本選手権では自身初の80m台の優勝記録で11連覇を成し、シーズンを通した充実ぶりを表現。過去に獲得した銀2つに、最上色のコレクションを加えた。

伝統引き継ぐメダル

 アジア大会での金メダル獲得は4個。目標とした8個には届かず、アジアエリアのレベルアップを実感することになったが、銀と銅はともに8個で合計メダル数は20個となり、そこには価値ある内容や数字が含まれている。

 男子ハンマー投の土井宏昭(千葉陸協)は6投目の快投で逆転3位に滑り込み、3大会連続のメダル獲得。男子400mハードルの河北尚広(石丸製麺)は4着入線から、成迫健児(ミズノ)の失格による3位繰り上がり。喜べないかたちながら、日本勢の連続メダル記録がつながった。女子七種競技の中田有紀(日本保育サービス)は、日本勢7大会ぶりメダルの銀。女子400mの千葉麻美(ナチュリル)、同20km競歩の渕瀬真寿美(大塚製薬)らが価値ある銀メダルを獲得した。

2年先の「ロンドン」へ新世代が勃興
江里口、藤光が勝った日本選手権

 2年先に控えたロンドン五輪へ、若い世代が一歩、二歩と成長した年。日本選手権は、若手の勃興とベテランの堅調、その両方が表れる大会になった。

 男子100m、200mでは、2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの塚原直貴(富士通)と高平慎士(富士通)に、前年から日本代表に加わった大学4年の江里口匡史(早大)と、社会人2年目の藤光謙司(セーレン)が立ち向かった。

 10秒26(±0)で制した100mの江里口は、優勝候補として力通りの日本一。1年前は塚原の故障で転がり込んだ頂点だったが、今回は塚原を2位に退けてつかみ取った連覇である。

 藤光はコーナーの出口で高平らライバルを突き放し、日本歴代6位となる20秒38(+1.2)で初の日本一。度重なる故障で無冠のまま社会人を迎えた大器が、とうとう王座についた。

日本選手権 藤光謙司 ©月刊陸上競技

日本選手権 藤光謙司 ©月刊陸上競技

 社会人1年目ながらすでに代表キャリアが長い男子400mの金丸祐三(大塚製薬)は、大阪高3年時から続く連覇を「6」に伸ばした。800mは日本記録を持つ横田真人(富士通)が「一強時代」を迎え、圧勝での連覇を果たしている。5000mは松岡佑起(大塚製薬)、10000mは竹澤健介(ヱスビー食品)が初制覇を果たしている。

 一方、北京以前から活躍するベテラン勢も健在。女子400mハードルの久保倉里美(新潟アルビレックスRC)が充実期を謳歌し、日本選手権で日本人選手の大会最高タイム(55秒83)をマークした

 ハンマー投の室伏広治(ミズノ)が16連覇、畑山茂雄(ゼンリン)は10回目の優勝、室伏由佳(ミズノ)は円盤投9連覇とハンマー投3連覇を達成した。福士加代子(ワコール)は5000m、10000mの長距離2冠で女子MVPに。男子走幅跳を長く牽引する菅井洋平(ミズノ)は8m10(+1.8)を跳んだ。

ジュニア・ユース世代の動向
第1回ユース五輪で梨本らが活躍

 ジュニア選手の動向に目を向けると、カナダ・モンクトンを舞台に行われた第13回世界ジュニア選手権(7月19日~25日)で、日本勢は歴史的メダルラッシュに沸く。

 その筆頭となったのが男子200mの飯塚翔太(中大)。20秒67(+0.5)で制し、今大会の男子では初、短距離種目としては1965年ユニバーシアード(ハンガリー・ブダペスト)男子100mの飯島秀雄以来、全カテゴリーを通じて史上2人目の金メダリストとなった。身長184cmの大器は、「絶対に優勝するんだと言い聞かせて臨みました」と、世界を相手に堂々たるスプリントを披露した。

世界ジュニア 飯塚翔太 ©月刊陸上競技

 飯塚の快挙は大会5日目に生まれたが、この日の日本勢は男子でさらに3つのメダルを量産する。その口火を切ったのが男子走高跳の戸邉直人(筑波大)で、2m21で銅メダルを手にした。男子400mハードルの安部孝駿(中京大)はジュニア日本歴代3位の49秒46、男子やり投のディーン元気(早大)はジュニア日本歴代2位の76m44でともに銀メダルに輝いた。日本勢の今大会メダル第1号は大会2日目に誕生、女子10000m競歩で岡田久美子(立大)が銅メダルを手にしている。

 メダルには届かなかったが、女子400mハードルでは三木汐莉(東大阪大)がジュニア日本新の57秒35で4位と健闘。男子10000mでは大迫傑(早大)が7位、女子5000mで鈴木亜由子(名大)が5位に入賞、女子200mでは市川華菜(中京大)が同種目日本勢初入賞(7位)を飾るなど、4位以下の入賞も9種目で「11」を数え、史上最高成績を収めた。

 また、第1回ユースオリンピックがシンガポールで開催された年である。8月17日~23日の本大会へ向けて、アジア予選が5月に開催。インターハイ路線の日程を縫って高校生19名を派遣し、地区大会出場権を付与する特例措置も実施された。

 アジア予選では優勝4つとアジア代表枠14を獲得。インターハイ2週間後の遠征になった本大会では梨本真輝(市船橋高・千葉)が100m2位、本間圭祐(川崎橘・神奈川)が200m2位、松原奨(東海大翔洋高・静岡)が走幅跳2位と活躍した。

 鳥取で開催された全日中は、日吉克実(修善寺中・静岡)、土井杏南(朝霞一中)らによって男女のスプリント4種目で中学新が誕生する、歴史的な大会となった。

記事提供:月刊陸上競技