日本陸上競技連盟史
2015年度
2015年度
2015年4月~2016年3月
日本競歩、上昇一途
谷井が競歩初の世界大会メダル
中国・北京で開催された第15回世界選手権の男子50km競歩で、谷井孝行(自衛隊体育学校)が銅メダルを獲得し、五輪を含む世界大会の競歩種目で初のメダルを日本にもたらした。しかも、北京大会における日本勢唯一のメダルである。
谷井のメダル獲得は、過去の世界選手権で入賞を9度、五輪を含めると12度の入賞を積み重ねてきた日本競歩界の土台の上にあり、そして谷井による初メダルをきっかけに、以降の五輪・世界選手権で日本勢は連続メダルを継続していく。
谷井は前年のアジア大会で金メダルを獲得し、4月の日本選手権競歩50kmは自己3番目の3時間42分01秒で2位。調子が落ちていた状態での結果に手応えを得ていた。谷井と日本選手権覇者の荒井広宙(自衛隊体育学校)は2位集団でレースを進行。39kmでジャレド・タレント(豪州)がスパートし、谷井は4位に下がって苦しくなる。
そこにいったん下がっていた荒井が谷井に追いつき、「メダルを目指していきましょう」(荒井)、「よし、行こう」(谷井)と声を掛け合った。44kmで前回王者のロバート・ヘファーヘン(アイルランド)を捕らえ、2人が3、4位に浮上した。4位になった荒井によるレース内のアシストが谷井を奮い立たせた一方、荒井も谷井から学びを得て力をつけていた。
16歳のサニブラウン旋風
世界ユース選手権でボルト超え、世界選手権200mに最年少出場
この年、16歳のサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西高・東京)が大ブレイクを果たす。3月生まれの高校2年生は、昨年のインターハイ200m2位などを経て急速に力をつけ、インターハイ路線を進みながらシニア大会にも参戦した。手始めに5月、静岡国際200mでレジェンド・末續慎吾(熊本陸協)の隣のレーンを走り、20秒73(-0.1)。6月はインターハイ南関東地区大会で4種目に出場した直後、第99回日本選手権(6月26日~28日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)で、日本を驚かせる。100m、200mともに2位の大躍進を遂げ、200m予選で京都・洛南高時代の桐生祥秀が作った高2最高を破る20秒56(+1.4)を記録した。
7月はコロンビアで開催された世界ユース選手権。100mに10秒28(-0.4)で圧勝すると、200mも快勝して2冠。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を破る20秒34(-0.4)を出し、世界を驚かせた。20秒34は高校新であり、日本歴代8位に位置するレコードである。大会全体のMVPにも選出された。次に国内、高校生に戻って、インターハイ200mに20秒82(-1.5)で圧勝。100mは大嶋健太(東京高)との歴史的な名勝負を演じて0.01秒差の10秒30(-0.8)で2位。
8月は世界選手権にデビュー。16歳172日での出場は、日本代表としても、200mという種目でも最年少記録になった。予選、準決勝ともにジャスティン・ガトリン(米国)と同組を走り、予選は20秒35(±0)の2着で着順通過。準決勝は20秒47(-0.2)で5着と、決勝進出目前の快走を重ねている。
女子長距離が奮闘、鈴木と新井が惜しい9位
北京世界選手権は男子50km競歩の2人と、女子マラソンの伊藤舞(大塚製薬)が7位を占め、入賞はこの3つ。女子マラソンは伊藤の粘り強い走りにより、1997年アテネ大会から続く日本勢の連続入賞を「10」の大台に乗せた。
入賞まであと一歩の9位となったのが、女子5000mの鈴木亜由子(日本郵政グループ)と男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC)。鈴木は日本歴代5位となる自己ベストの15分08秒29で、入賞まであと0.29秒だった。新井は予選で世界選手権日本最高の84m66をマーク。決勝の83m07はトップ8にあと6cm。85m付近に投じた3投目がファウルとなったのが惜しい。新井はケガからの復帰初戦となった日本選手権で大会新となる84m14。第一人者の地位を築いている。
女子やり投の海老原有希(スズキ浜松AC)は予選で60m30を投げながら、62m台となった予選通過ラインに届かなかった。海老原自身は5月のゴールデングランプリ川崎(神奈川・等々力)で63m80の日本新をマークし、昨年苦しめられた足首のケガから復調。日本選手権4連覇などやり投界を牽引している。その女子やり投で、北口榛花(旭川東高・北海道)が世界ユース選手権でサニブラウンとともに金メダルを獲得。日本女子投てき種目で「初の世界一」となり、やり投界の新風として注目され始めた。
藤光、高瀬、福島が男女のスプリントを牽引
日本選手権の男子100mは3月に豪州で日本人最速の9秒87(+3.3)を出した桐生祥秀(東洋大)が大会前のケガで欠場し、山縣亮太(セイコーホールディングス)は準決勝を棄権。200mは飯塚翔太(ミズノ)が決勝のレース中にケガで途中棄権。しかし、そこはトップ層が厚い男子スプリント。サニブラウンの登場に沸く一方で、日本の先頭に立って牽引役を務めたのが29歳の藤光謙司(ゼンリン)と26歳の高瀬慧(富士通)だった。
高瀬は5月に100m10秒09(-0.1)、200m20秒14(+1.0)をマーク。藤光はゴールデングランプリ川崎で5年ぶり自己新となる20秒33(-0.5)を出して優勝している。前年1、2位が不在の日本選手権100mは高瀬が10秒28(-0.9)で初優勝。200mはサニブラウンを挟んで内に高瀬。外に藤光。このレースはさらなる自己新となる20秒32(+0.8)を出した藤光が、2位タイの高瀬、サニブラウンに快勝した。
女子スプリントでは福島千里(北海道ハイテクAC)が好調。自己記録を更新できなかった至近4年から再上昇に転じ、6月のアジア選手権(中国・武漢)で女子100m金メダル。日本選手権の連覇を100mで6、200mは5に伸ばし、世界選手権100m予選で自身の日本記録にあと0.02秒の11秒23(-0.5)をマーク。2大会ぶりの準決勝進出を果たした。
また、女子4×400mリレーが世界選手権の予選で3分28秒91と、8年ぶりに日本記録を大幅更新。51秒6のラップを刻んだ2走・市川華菜(ミズノ)の貢献が大きかったが、出産を経て前年に復帰した千葉麻美(東邦銀行)が3走で流れを加速させたことも見逃せない。
男子走高跳、男子十種競技が活況
日本選手権男子走高跳は、世界選手権参加突破者の4人が激突。昨年に日本歴代3位タイの2m31を跳んだ戸邉直人(つくばツインピークス)、6月上旬のアジア選手権で金メダルを獲得したばかりの衛藤昴(AGF)、関東インカレで自己ベストを7cm更新する2m28を跳んだ平松祐司(筑波大)、ゴールデングランプリ川崎で2m28の自己新を跳んだ高張広海(日立ICT)が各大会で名勝負を繰り広げ、戸邉、衛藤、平松が世界選手権にフルエントリーされた。
男子十種競技は世界選手権で初めて2人がエントリー。8058点で日本選手権6連覇の右代啓祐と、アジア選手権の金メダルで代表権を得た中村明彦のスズキ浜松ACコンビが、世界の舞台で励まし合いながら戦った。女子七種競技は19歳のヘンプヒル恵(中大)が日本選手権に初優勝している。
村山と鎧坂、男子10000mで14年ぶり日本新
2015年の後期は、長距離・競歩種目のリオデジャネイロ五輪へ向けたレースが活発化。10月下旬の全日本50km競歩高畠大会で優勝した森岡紘一朗(富士通)が、谷井に続く五輪代表に内定し、3大会連続の出場へ。12月の八王子ロングディスタンスで、高岡寿成(カネボウ)が保持していた男子10000mの日本記録が14年ぶりに更新される。村山紘太、鎧坂哲哉(ともに旭化成)が27分29秒69、27分29秒74を出し、時計の針を動かした。
世界選手権を含めマラソン代表選考会を2016年3月までに終え、福士加代子(ワコール)が4大会連続五輪代表入りを決めるなど、男女3名ずつが選出された。
記事提供:月刊陸上競技
2015年4月~2016年3月
日本競歩、上昇一途
谷井が競歩初の世界大会メダル
中国・北京で開催された第15回世界選手権の男子50km競歩で、谷井孝行(自衛隊体育学校)が銅メダルを獲得し、五輪を含む世界大会の競歩種目で初のメダルを日本にもたらした。しかも、北京大会における日本勢唯一のメダルである。

世界陸上北京大会 谷井孝行 ©月刊陸上競技
谷井のメダル獲得は、過去の世界選手権で入賞を9度、五輪を含めると12度の入賞を積み重ねてきた日本競歩界の土台の上にあり、そして谷井による初メダルをきっかけに、以降の五輪・世界選手権で日本勢は連続メダルを継続していく。
谷井は前年のアジア大会で金メダルを獲得し、4月の日本選手権競歩50kmは自己3番目の3時間42分01秒で2位。調子が落ちていた状態での結果に手応えを得ていた。谷井と日本選手権覇者の荒井広宙(自衛隊体育学校)は2位集団でレースを進行。39kmでジャレド・タレント(豪州)がスパートし、谷井は4位に下がって苦しくなる。
そこにいったん下がっていた荒井が谷井に追いつき、「メダルを目指していきましょう」(荒井)、「よし、行こう」(谷井)と声を掛け合った。44kmで前回王者のロバート・ヘファーヘン(アイルランド)を捕らえ、2人が3、4位に浮上した。4位になった荒井によるレース内のアシストが谷井を奮い立たせた一方、荒井も谷井から学びを得て力をつけていた。

世界陸上北京大会 荒井広宙(左)、谷井孝行(右) ©月刊陸上競技
16歳のサニブラウン旋風
世界ユース選手権でボルト超え、世界選手権200mに最年少出場
この年、16歳のサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西高・東京)が大ブレイクを果たす。3月生まれの高校2年生は、昨年のインターハイ200m2位などを経て急速に力をつけ、インターハイ路線を進みながらシニア大会にも参戦した。手始めに5月、静岡国際200mでレジェンド・末續慎吾(熊本陸協)の隣のレーンを走り、20秒73(-0.1)。6月はインターハイ南関東地区大会で4種目に出場した直後、第99回日本選手権(6月26日~28日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)で、日本を驚かせる。100m、200mともに2位の大躍進を遂げ、200m予選で京都・洛南高時代の桐生祥秀が作った高2最高を破る20秒56(+1.4)を記録した。
7月はコロンビアで開催された世界ユース選手権。100mに10秒28(-0.4)で圧勝すると、200mも快勝して2冠。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を破る20秒34(-0.4)を出し、世界を驚かせた。20秒34は高校新であり、日本歴代8位に位置するレコードである。大会全体のMVPにも選出された。次に国内、高校生に戻って、インターハイ200mに20秒82(-1.5)で圧勝。100mは大嶋健太(東京高)との歴史的な名勝負を演じて0.01秒差の10秒30(-0.8)で2位。

世界ユース選手権 サニブラウンアブデルハキーム ©月刊陸上競技
8月は世界選手権にデビュー。16歳172日での出場は、日本代表としても、200mという種目でも最年少記録になった。予選、準決勝ともにジャスティン・ガトリン(米国)と同組を走り、予選は20秒35(±0)の2着で着順通過。準決勝は20秒47(-0.2)で5着と、決勝進出目前の快走を重ねている。
女子長距離が奮闘、鈴木と新井が惜しい9位
北京世界選手権は男子50km競歩の2人と、女子マラソンの伊藤舞(大塚製薬)が7位を占め、入賞はこの3つ。女子マラソンは伊藤の粘り強い走りにより、1997年アテネ大会から続く日本勢の連続入賞を「10」の大台に乗せた。
入賞まであと一歩の9位となったのが、女子5000mの鈴木亜由子(日本郵政グループ)と男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC)。鈴木は日本歴代5位となる自己ベストの15分08秒29で、入賞まであと0.29秒だった。新井は予選で世界選手権日本最高の84m66をマーク。決勝の83m07はトップ8にあと6cm。85m付近に投じた3投目がファウルとなったのが惜しい。新井はケガからの復帰初戦となった日本選手権で大会新となる84m14。第一人者の地位を築いている。
女子やり投の海老原有希(スズキ浜松AC)は予選で60m30を投げながら、62m台となった予選通過ラインに届かなかった。海老原自身は5月のゴールデングランプリ川崎(神奈川・等々力)で63m80の日本新をマークし、昨年苦しめられた足首のケガから復調。日本選手権4連覇などやり投界を牽引している。その女子やり投で、北口榛花(旭川東高・北海道)が世界ユース選手権でサニブラウンとともに金メダルを獲得。日本女子投てき種目で「初の世界一」となり、やり投界の新風として注目され始めた。
藤光、高瀬、福島が男女のスプリントを牽引
日本選手権の男子100mは3月に豪州で日本人最速の9秒87(+3.3)を出した桐生祥秀(東洋大)が大会前のケガで欠場し、山縣亮太(セイコーホールディングス)は準決勝を棄権。200mは飯塚翔太(ミズノ)が決勝のレース中にケガで途中棄権。しかし、そこはトップ層が厚い男子スプリント。サニブラウンの登場に沸く一方で、日本の先頭に立って牽引役を務めたのが29歳の藤光謙司(ゼンリン)と26歳の高瀬慧(富士通)だった。
高瀬は5月に100m10秒09(-0.1)、200m20秒14(+1.0)をマーク。藤光はゴールデングランプリ川崎で5年ぶり自己新となる20秒33(-0.5)を出して優勝している。前年1、2位が不在の日本選手権100mは高瀬が10秒28(-0.9)で初優勝。200mはサニブラウンを挟んで内に高瀬。外に藤光。このレースはさらなる自己新となる20秒32(+0.8)を出した藤光が、2位タイの高瀬、サニブラウンに快勝した。

日本選手権男子200m ©月刊陸上競技
藤光は7月に欧州に遠征して3戦し、このうちスイスのルツェフェンで20秒13(+0.6)の日本歴代2位をマーク。藤光と高瀬も世界選手権の準決勝に進み、男子200mは代表3名全員が予選突破を果たす充実ぶりだった。また、5月の世界リレーでは、大瀬戸一馬(法大)、藤光、桐生、谷口耕太郎(中大)のオーダーで臨んだ4×100mリレーで銅メダルを獲得。8位入賞で与えられる翌年の五輪出場権を早々と獲得した。
日本選手権男子200m 藤光謙司 ©月刊陸上競技
女子スプリントでは福島千里(北海道ハイテクAC)が好調。自己記録を更新できなかった至近4年から再上昇に転じ、6月のアジア選手権(中国・武漢)で女子100m金メダル。日本選手権の連覇を100mで6、200mは5に伸ばし、世界選手権100m予選で自身の日本記録にあと0.02秒の11秒23(-0.5)をマーク。2大会ぶりの準決勝進出を果たした。
また、女子4×400mリレーが世界選手権の予選で3分28秒91と、8年ぶりに日本記録を大幅更新。51秒6のラップを刻んだ2走・市川華菜(ミズノ)の貢献が大きかったが、出産を経て前年に復帰した千葉麻美(東邦銀行)が3走で流れを加速させたことも見逃せない。
男子走高跳、男子十種競技が活況
日本選手権男子走高跳は、世界選手権参加突破者の4人が激突。昨年に日本歴代3位タイの2m31を跳んだ戸邉直人(つくばツインピークス)、6月上旬のアジア選手権で金メダルを獲得したばかりの衛藤昴(AGF)、関東インカレで自己ベストを7cm更新する2m28を跳んだ平松祐司(筑波大)、ゴールデングランプリ川崎で2m28の自己新を跳んだ高張広海(日立ICT)が各大会で名勝負を繰り広げ、戸邉、衛藤、平松が世界選手権にフルエントリーされた。
男子十種競技は世界選手権で初めて2人がエントリー。8058点で日本選手権6連覇の右代啓祐と、アジア選手権の金メダルで代表権を得た中村明彦のスズキ浜松ACコンビが、世界の舞台で励まし合いながら戦った。女子七種競技は19歳のヘンプヒル恵(中大)が日本選手権に初優勝している。
村山と鎧坂、男子10000mで14年ぶり日本新
2015年の後期は、長距離・競歩種目のリオデジャネイロ五輪へ向けたレースが活発化。10月下旬の全日本50km競歩高畠大会で優勝した森岡紘一朗(富士通)が、谷井に続く五輪代表に内定し、3大会連続の出場へ。12月の八王子ロングディスタンスで、高岡寿成(カネボウ)が保持していた男子10000mの日本記録が14年ぶりに更新される。村山紘太、鎧坂哲哉(ともに旭化成)が27分29秒69、27分29秒74を出し、時計の針を動かした。
世界選手権を含めマラソン代表選考会を2016年3月までに終え、福士加代子(ワコール)が4大会連続五輪代表入りを決めるなど、男女3名ずつが選出された。
記事提供:月刊陸上競技


