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日本陸上競技連盟史

2004年度

2004年度
平成16年4月~平成17年3月


アテネ五輪で金メダル2つ

女子マラソンの野口と男子ハンマー投の室伏

108年ぶりに聖地・ギリシャに戻った近代オリンピック──。第28回オリンピック・アテネ大会は、史上最多202の国・地域が参加して、2024年8月23日に開幕。陸上競技は8月18日にオリンピアで男女の砲丸投を行った後、8月20~29日にアテネ市内のオリンピック・スタジアムで開催された。
8月22日の日曜日、日本は1日で金メダル2つを取る快挙。女子マラソンで野口みずき(グロ-バリー)、男子ハンマー投では室伏広治(ミズノ)がそれを成し遂げた。

女子マラソンは1896年の第1回近代オリンピックと同じ、マラトンからアテネ市内のパンアテナイコ・スタジアムまでの片道コースで行われた。午後6時のスタートながら、気温は35度、湿度31%。日が陰っても30度を下回らない暑さで、野口はフィニッシュ後、軽い熱中症で嘔吐し、救護所で点滴治療を受けたほど。

6月、7月は1300kmを超える走り込みと高地トレーニングで準備した26歳の野口。事前のコース下見で決めていた25km地点でスパートすると、27kmからは独走態勢に。身長150cm、体重40kgの小柄な身体を弾ませながら、2時間26分20秒でフィニッシュした。昨年のパリ世界選手権は銀メダル。藤田信之監督から「25kmあたりで仕掛けろ」と指示されていた野口は、「給水の失敗は命取りになる」と肝に銘じて、「必ず取るように心掛けました」とレース後に明かした。

「表彰式の感動は一生忘れないでしょう。首に下がった金メダルの重さをズシリと感じながら、日の丸を見上げていると、熱いものがジワーッと込み上げてきました」

女子マラソンで日本選手が優勝するのは、シドニー大会の高橋尚子(積水化学)に続いて2大会連続。さらに、日本はこの種目で4大会連続のメダルを獲得した。また今回は、土佐礼子(三井住友海上)が5位、坂本直子(天満屋)が7位と、3人が入賞を果たした。

野口みずき ©フォート・キシモト

同日、オリンピック・スタジアムでは男子ハンマー投の決勝が行われ、82m91を投げた室伏が28cm差でアドリアン・アンヌシュ(ハンガリー)に次ぐ2位。その後、ドーピング検査でアンヌシュに陽性反応が出て失格になり、室伏が繰り上げで1位になった。日本の投てき陣では、五輪史上初のメダル獲得。一大会で2つの金メダルを取ったのは、1936年のベルリン大会以来、68年ぶりのことだった。
アテネで室伏に渡されたのは銀メダルで、それを返却し、新たに金メダルが渡されたのは、1ヵ月後の横浜。9月23日に横浜国際総合競技場で「スーパー陸上2004ヨコハマ」が行われ、室伏は今季自己最高の83m15で圧勝。競技終了後に「金メダル授与式」が挙行されて、壇上に立った室伏は「この金メダルは皆さんの応援がもたらした〝真実の金メダル〟だと思います」と話した。

室伏広治 ©フォート・キシモト

男子マラソンは3大会ぶりの入賞

アテネ五輪の最終日に行われた男子マラソンでは、油谷繁(中国電力)が2時間13分11秒で5位。日本勢の五輪入賞は、1992年のバルセロナ大会以来、12年ぶりだった。油谷は2001年エドモントン世界選手権、03年パリ世界選手権に続く5位で、その安定感が光った。諏訪利成(日清食品)が6位に入って、日本は女子と同様、男子も複数入賞を果たした。

トラック種目でも歴史に残る快挙があった。男子リレーで、4×100m、4×400mともに4位入賞。メダルにはあと一歩届かなかったものの、ダブル入賞は、2種目とも5位に入った1932年のロサンゼルス大会以来、72年ぶりのことだった。

4×100mリレーは土江寛裕(富士通)、末續慎吾(ミズノ)、髙平慎士(順大)、朝原宣治(大阪ガス)のオーダー。アンカーの朝原が7番手争いから4位まで押し上げ、38秒49でフィニッシュして、日本のアンダーハンドパスが一躍注目された。4×400mリレーは、山口有希(東海大)、小坂田淳(大阪ガス)、伊藤友広(法大)、佐藤光浩(富士通)のオーダーで、3分00秒99だった。

この他、男子110mハードル一次予選で、谷川聡(ミズノ)が13秒39(+1.5)の日本新をマーク。内藤真人(法大)が2003年に出した13秒47を、0秒08更新した。

女子砲丸投で森が日本人初の18m台

アテネ五輪の砲丸投は、オリンピックの聖火が採火される場所として知られるギリシャのオリンピアで行われたが、その場所に日本代表として立った女子砲丸投の森千夏(スズキ)は、2004年シーズンを好スタート。4月18日に静岡県浜松市の四ツ池競技場で行われた静岡県西部選手権で、日本人初の18m台となる18m22の日本新を2投目に記録した。自らの持つ日本記録を、一気に42cmも更新。シーズン前、中国・上海体育学院で2ヵ月に及ぶ合宿を敢行し、3月25日に帰国したばかりだった。合宿に入ってすぐの2月18日には、日中対抗室内で17m46の室内日本新を投げていた。18m55のアテネ五輪参加A標準記録には届かなかったが、夢の五輪代表入りへ猛アピールとなった。

女子棒高跳で相次ぎ日本新

2004年の春季サーキット第5戦・水戸国際陸上が5月5日に行われ、女子棒高跳で中野真実(三観陸協)が4m31の日本新記録を樹立した。中野は5月1日の香川県選手権で、4m30の日本新をマークしていた。4m40のアテネ五輪参加A標準記録は惜しくも失敗したが、4m25のB標準記録を2回続けて破り、この種目初の五輪代表へ近づいた。

5月29日の中京大土曜記録会では、近藤高代(長谷川体育施設)が中野の記録を破る4m35をクリア。初めて単独の日本記録保持者になった。

女子4×100mリレーで43秒77の日本新

国際グランプリ大阪が5月8日、大阪市の長居陸上競技場で開催された。昨年のパリ世界選手権と同様、石田智子(長谷川体育施設)、鈴木亜弓(スズキ)、坂上香織(ミキハウス)、小島初佳(ピップフジモト)とつないだ女子4×100mリレー日本代表は、タイや中国を抑えて2位に入り、43秒77の日本新をマークした。昨年の南部記念で出した44秒10を大幅に破る、初めての43秒台。今夏のアテネ五輪から、リレー種目のオリンピック出場条件は「有効期間内に出したベスト2記録の平均で、上位16ヵ国以内」という規定が設けられた。記録は、国際陸連かアジアなど各地域の陸連が主催する大会で出されたものに限られている。

中四国で初の日本選手権、鳥取で開催

アテネ五輪の代表選手選考会を兼ねた第88回日本選手権大会が6月4~6日、鳥取市の県立布勢総合運動公園陸上競技場で行われた。中四国では初の開催。晴天に恵まれ、4つの日本新記録が誕生した。

男子棒高跳では、澤野大地(ニシ・スポーツ)が2年連続の日本新V。昨年のこの大会で出した5m75を5cm上回る、5m80に成功した。女子800mでは、杉森美保(京セラ)が2分00秒46。昨年、西村美樹(東学大)が樹立した2分02秒10の日本記録を、大幅に塗り替えた。この2人が今大会のMVPに選出された。

また、女子七種競技で中田有紀(さかえクリニックTC)が5962点の日本新。女子200mでは、信岡沙希重(ミズノ)が23秒33(+0.4)。新井初佳(ピップフジモト)が1999年に出した23秒46を、5年ぶりに破る日本新だった。

この他、男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)が10連覇。父・重信の偉業に並んだ。男子10000mでは19歳の大野龍二(旭化成)が27分59秒32のジュニア日本新記録で優勝し、アテネ五輪の代表をつかんだ。

女子400mで18歳の丹野が日本新

6月半ばにアジア選手権がマレーシア・イポーで開催され、6月13日の女子400m決勝で、18歳の丹野麻美(福島大)が52秒88の日本新(=ジュニア日本新・学生新)で2位に入った。柿沼和恵(ミズノ)が2001年の東アジア大会(大阪)で出した52秒95を、0.07秒更新。丹野のこれまでの自己ベストは、福島・郡山東高3年だった前年の静岡国体で出した53秒59で、6月5日の日本選手権では学生ルーキーながら初出場初優勝していた。

室伏兄妹がそろってアテネ五輪へ

中京大土曜記録会が6月19日に愛知県豊田市の同大学で行われ、2週間前の日本選手権で優勝していた女子ハンマー投の室伏由佳(ミズノ)が、66m68の日本新。綾真澄(グローバリー)が5月に出した66m31の日本記録を更新し、兄・広治とともにアテネ五輪代表入りへ望みをつないだ。

これがかなった室伏兄妹は、8月1日に山梨県富士吉田市の富士北麓公園競技場で行われたスプリントチャレンジin山梨に出場。由佳は6月に出した66m68の日本記録をさらに伸ばして、67m77。五輪A標準記録の67m50を破り、アテネ行きに自ら花を添えた。広治は82m88の今季最高をマークして、好調ぶりを示した。

女子マラソンで渋井陽子が日本新

第31回ベルリン・マラソンが9月26日にドイツの当地で行われ、渋井陽子(三井住友海上)が2時間19分41秒の日本新(世界歴代4位)で優勝。3年前のこの大会で高橋尚子(積水化学)が樹立した2時間19分46秒の日本記録を破った。日本女子がこの大会5連覇。大南博美(UFJ銀行)が日本歴代9位の2時間23分26秒で2位に入った。


松宮隆行が30kmロードで世界新

熊日30kmロードレース大会が2005年2月27日、熊本市内のびぷれす熊日会館前を発着点とするコースで行われた。2月21日に25歳になったばかりの松宮隆行(コニカミノルタ)が、1時間28分00秒の世界新記録で2年ぶり2回目の優勝。自身が2年前のこの大会で出した1時間28分36秒を更新した。


日中対抗室内、女子400mで丹野が日本新

日中対抗室内シリーズの日本ラウンド・横浜大会は中止になり、3月1日に中国・天津大会のみが行われた。日本勢は3種目で優勝した。女子400mに出場した丹野麻美(福島大)は、先頭の中国選手をフィニッシュ地点前で激しく追い込んだものの、同タイム着差ありで2位。しかし、53秒64は室内日本新。柿沼和恵(ミズノ)が1998年に出した54秒05を、7年ぶりに0秒41更新した。


記事提供:月刊陸上競技