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日本陸上競技連盟史

2013年度

2013年度
平成25年4月~平成26年3月

モスクワ世界選手権はメダル1、入賞8
福士の銅メダルなど長距離・競歩が健闘

 8月にモスクワで開催された第14回世界選手権において、日本勢はメダル1個、入賞8つの成果を収めた。前年の五輪より入賞を5つ増やし、それに貢献したのは長距離、競歩種目である。

 女子マラソンは出場枠(5枠)いっぱいの選出を行わず、出場は3人。気温30度を超える過酷なコンディションの中、福士加代子(ワコール)は10kmではや7人に絞られた先頭集団で粘りの走り。30km手前で福士は4人の集団から遅れたが、しばらくして落ちてきたメセレチ・メルカム(エチオピア)を35km過ぎに捕らえて3位に浮上した。4位には、第2集団から追い上げた木﨑良子(ダイハツ)が続く。金メダルに輝いた2004年アテネ五輪以来、9年ぶりの世界大会出場となった野口みずき(シスメックス)は30km過ぎに棄権した。

世界選手権 福士加代子 ©月刊陸上競技

世界選手権 福士加代子 ©月刊陸上競技

 男子マラソンは中本健太郎(安川電機)が、前年のロンドン五輪に続いて5位に食い込んだ。第2集団から追い上げた五輪と異なり、先頭集団に勝負を挑む。そのうえで、30.5kmで引き離されてからは真骨頂の粘りを発揮。日本男子マラソンで五輪、世界選手権の連続入賞は初めてである。

 新谷仁美(ユニバーサルエンターテインメント)の10000m5位も出色の内容。3500mから先頭に立ち、ハイペースで押し切る戦略にチャレンジする。後方のアフリカ勢が縦一列になり守りの姿勢。残り500mまで引き離せなかった4人のスパートに屈したが、他の有力選手を振るい落としたことでつかんだ5位である。

 男子競歩は20kmの西塔拓己(東洋大)が5位、50kmの谷井孝行(SGHグループさがわ)が8位(後にそれぞれ6位、9位からの繰り上がり)。新鋭の西塔は先頭にポンと飛び出す持ち前の積極性を見せた後、中盤以降は粘りの歩き。谷井は途中棄権となったロンドン五輪の雪辱であり、2大会連続入賞であり、未来につかむ快挙への布石である。

 その他の入賞者は、男子ハンマー投5位(後に6位から繰り上がり)の室伏広治(ミズノ)、6位の男子4×100mリレー、男子棒高跳6位の山本聖途(中京大)である。

世界選手権 山本聖途 ©月刊陸上競技

 38歳の室伏は身体のケアを優先しつつ、日本選手権後の状態が良好だったことから「懸ける試合があってもいい」と出場に踏み切った。8度目の世界選手権で5度目となる入賞は、自身最後の世界大会入賞になった。

 男子4×100mリレーと男子棒高跳は、若手が巻き起こしたムーブメントが直結した入賞と言えるだろう。

高校生・桐生 衝撃の「10秒01」

 この年、陸上界の話題は17歳の桐生祥秀(洛南高・京都)で持ち切りだった。

 4月29日の第47回織田記念(広島・広島広域)100mの予選で叩き出した10秒01(+0.9)の衝撃たるや。日本人初の9秒台にあと0.02秒、日本記録にあと0.01秒、ジュニア世界記録と同タイム、アジアジュニア新、日本歴代2位、国内日本人最高、世界選手権A標準突破……。数字の持つ価値が、あらゆる表現で埋め尽くされた。決勝は非公認になる追い風2.7mの中、桐生10秒03、山縣亮太(慶大)10秒04、江里口匡史(大阪ガス)10秒15のレースを演じている。

織田記念 桐生祥秀 ©月刊陸上競技


 快進撃は続く。ゴールデングランプリ東京は日本人トップの3位で10秒40(-1.2)。インターハイ近畿大会は200mで高校新の20秒41(+0.5)をマークし、第97回日本選手権(6月7日~9日/東京・味の素スタジアム)は山縣に次ぐ2位ながら、塚原直貴(富士通)らに先着。高校生初のダイヤモンドリーグ出場、3冠のインターハイから1週間のスパンで世界選手権100m予選を迎え、4×100mリレー6位に貢献する疾走。国体3連覇で濃密な高校ラストシーズンを締めた。

飯塚、山縣の充実
4継5位の背景に日本スプリントの選手層

 高校生の桐生を迎え撃つシニア陣の矢面に立たされながら、飯塚翔太(中大)、山縣亮太(慶大)が日本代表の中心を占める実力をつけていった。山縣は100m、飯塚は200mと得意分野が明確で、それぞれが日本選手権を初制覇し、7月7日~12日にロシア・カザンで開かれた第27回ユニバーシアードは銀と銅。飯塚は静岡国際で日本歴代3位、学生新となる20秒21(+1.4)を出し、世界選手権200mで準決勝進出も果たしている。

 一方で、北京五輪メダリストの高平慎士(富士通)が世界大会7大会ぶりに代表を外れ、塚原直貴(富士通)も復権へあと一歩。新旧の厚い選手層を背景に臨んだ世界選手権の男子4×100mリレーは、予選を前に山縣が故障で離脱するピンチがあったものの、桐生、藤光謙司(ゼンリン)、高瀬慧(富士通)、飯塚の急造オーダーは、メダル争いにはやや劣ったものの入賞をものにするベースの高さがあった。

棒高跳の山本が充実の1年を完走
ユニバ銀と世界選手権6位

 男子棒高跳・山本聖途(中京大)の快進撃は、2月のジュニア室内オープン競技において、9年ぶりの室内日本新となる5m71から始まる。早々に世界選手権A標準(5m70)をクリアした。

 5月の東海インカレでは5m74の日本歴代2位、学生新を跳躍。日本選手権は5m70を悠々と征服して連覇を達成する。その日本選手権は2位の澤野大地(富士通)がB標準をクリア。マウントサンアントニオ大リレーカーニバルでA標準を突破済みの荻田大樹(ミズノ)が3位。3人を世界選手権のピットに送り出せたことは、山本の6位入賞の力水になった。

 世界選手権に臨む前に臨んだユニバーシアードは銀メダルを獲得。第1回大会の安田矩明(東教大)以来、日本勢54年ぶりのメダルである。

女子400mなどジュニアの躍進
村上、青山、海老原らベテランも健在

 桐生以外でもジュニア選手の躍進が印象的だった。女子400mは高校生たちが革新的なシーズンを送る。特に杉浦はる香(浜松市立高・静岡)が日本選手権で日本歴代2位、21年ぶり高校新、9年ぶりジュニア日本新となる52秒52を出して優勝したことはインパクト大。2位の大木彩夏(新島学園高・群馬)も高校生だった。インターハイは大木が杉浦を破り、29年前の大会記録を塗り替えている。

 一方、ベテラン勢の活動も無視できない。女子やり投の海老原有希(スズキ浜松AC)は織田記念で62m83の日本新をマーク。男子やり投の村上幸史(スズキ浜松AC)は前年のケガを払拭するように、織田記念で日本歴代2位を取り返す85m96。ゴールデングランプリ東京で優勝、日本選手権の奪還、国体成年10勝(少年含め12勝)達成と、充実していた。

 女子走高跳の福本幸(甲南学園AC)は豪州選手権で9年ぶり自己タイとなる1m92を跳び、B標準をクリア。2007年大阪大会以来3大会ぶりに世界選手権の舞台に立った。佐藤悠基(日清食品グループ)は前年に続き、日本選手権男子10000mで大迫傑(早大)を破り、5000mで日本記録にあと0.4秒の13分13秒60を出している。

国際大会が盛りだくさん
ユニバーシアードでメダルラッシュ

 7月にアジア選手権やユニバーシアード、世界ユース選手権、10月に東アジア大会と、多くの世界大会、エリア大会が実施された。

 7月のユニバーシアードで、日本勢は個人種目のメダル11個(金2、銀4、銅5)を獲得する大活躍。女子10000mの鈴木亜由子(名大)、女子ハーフマラソンの津田真衣(立命大)が金メダルを、前述の山縣や山本、飯塚らのメダル獲得があった。男子ハーフマラソンでは中村匠吾(駒大)が銅メダル。男子円盤投の堤雄司(国士大院)は自身が4月の和歌山で出した58m84の学生記録に迫る58m43を投じ、この種目では画期的な8位入賞を果たした。

 第8回世界ユース選手権(17歳以下)での活躍も見事。男子10000m競歩で山西利和(堀川高・京都)が金。青山聖佳(松江商高・島根)、松本奈菜子(浜松市立高・静岡)らで編成した女子メドレーリレーが8度目の挑戦でメダル(銅)をつかんだ。

 9月7日、夏季オリンピック・パラリンピックの2020年開催都市が東京に決まった。2年後のリオデジャネイロ大会だけでなく、東京大会への長期展望が意識され、陸上界全体が歩き始めていった。2013年12月にリレーとマラソンのナショナルチームが発足し、国際大会へ向けた強化が機能していくこととなる。


記事提供:月刊陸上競技