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日本陸上競技連盟史

2016年度

2016年度
2016年4月~2017年3月

大盛況の五輪トライアル
各地、各種目で続々好記録

 リオ五輪イヤーが開幕。その代表を争う各選考会は、その先の「東京」も念頭に、未来志向の機運に満ちた。選考基準では参加標準記録の上に、日本選手権8位以内で即内定となる「派遣設定記録」が設定された。

 棒高跳陣が出足好調。山本聖途(トヨタ自動車)は1月に5m77の室内日本新でスタートし、4月初旬に荻田大樹(ミズノ)が米国・テキサスで5m70に成功し参加標準記録に到達。澤野大地(富士通)は1年ぶりの復帰戦となった織田記念で山本、荻田に勝ち、5m60を跳んだ。女子も我孫子智美(滋賀レイクスターズ)はテキサスで4m33を記録する。

 4月の日本選手権50km競歩は、谷井孝行(自衛隊体育学校)、荒井広宙(同)が1、2位。新たに荒井が代表に決まり、すでに内定を得ている谷井、森岡紘一朗(富士通)との最強布陣に。

 直線の追い風が定番の織田記念、静岡国際が向かい風に阻まれたものの、春季サーキットにおいて標準突破の報せも続々と。第50回を迎えた4月29日の織田記念では、1928年アムステルダム五輪男子三段跳で全競技を通じて日本人初の金メダリストとなった織田幹雄の名を冠した大会にふさわしく、男子三段跳で長谷川大悟(日立ICT)が16m88(+0.2)を記録した。

 日本選抜和歌山の男子十種競技では右代啓祐(スズキ浜松AC)が8160点。200mでは飯塚翔太(ミズノ)が海外で20秒49、5月3日の静岡国際では20秒38をマークした。米国・カルフォルニアからは、女子10000mで鈴木亜由子(日本郵政グループ)が31分18秒16を記録する。

 標準記録には届かないものの、女子七種競技でヘンプヒル恵(中大)が5720点、宇都宮絵莉(長谷川体育施設)が5668点の日本歴代2、3位。女子ハンマー投の渡邉茜(丸和運輸機関)は、4月2日の豪州選手権で66m24と躍進するや、静岡国際では66m79を投げて日本記録に接近した。

セイコーゴールデングランプリ川崎の盛り上がり

 海外のトップ選手を迎えた5月8日のセイコーゴールデングランプリ川崎で日本勢の勢いが加速する。

 男女やり投と男女400mハードルで派遣&標準記録突破が。新井涼平(スズキ浜松AC)が84m41で派遣設定記録を突破、海老原有希は自身4番目の62m13で参加標準記録に到達。野澤啓佑(ミズノ)が48秒67で派遣設定、久保倉里美(新潟アルビレックスRC)は56秒14で参加標準に達した。

 男子100mは、ともに昨年度のケガから復調した山縣亮太(セイコーホールディングス)、桐生祥秀(東洋大)が2、4位。昨年度に頭角を現したウォルシュ・ジュリアン(東洋大)が男子400mで海外勢を退けて優勝する活躍を見せた。

記念すべき第100回日本選手権
福島22秒88、男子100m&200mで頂上決戦

 6月24日~28日、愛知県名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムにて日本選手権の「第100回」大会が開催された。男子100mは10秒0台、200mは20秒1~3台の層が分厚く、標準記録をクリアしただけでは代表入りできない状況。男子100m決勝は降りしきる雨の中、4レーンに山縣亮太(セイコーホールディングス)、6レーンに桐生祥秀(東洋大)。6月5日の布勢スプリントで4年ぶり自己ベストとなる10秒06(-0.5)を出した山縣は、抜群のスタートからレースを支配する。かたや桐生は30m付近で脚にケイレンを起こしそうになり、その後はケガを回避する走りになった。桐生はこの1週間後の日本学生個人選手権で10秒01(+1.8)を出すほどに好調だっただけに悔しい判断。

 そんな2人の間を切り裂くように、5レーンから伸びたのがケンブリッジ飛鳥(ドーム)だった。山縣と並んだ瞬間がフィニッシュ。ケンブリッジが10秒16(-0.3)、山縣が10秒17。誰もが胸躍る名勝負だった。

日本選手権男子100m ©月刊陸上競技

 男子200mはサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西高・東京)が欠場したものの、4人の標準記録(20秒50)突破者が決戦の舞台へ。充実の飯塚翔太(ミズノ)が日本歴代2位の20秒11(+1.8)で3年ぶり2度目の頂点に立った。トップでカーブを抜け、直線も突き抜ける圧巻の走りだった。20秒31で2位の高瀬慧(富士通)、6位の藤光謙司(ゼンリン)は派遣設定をクリアしており、代表入り。予選で標準記録を突破し、決勝でさらに20秒33の自己新へタイムを伸ばした原翔太(スズキ浜松AC)は、3位ながら選考基準による優先順位が下回り、代表からはじき出された。

 その直前に行われた女子200m決勝で、福島千里(北海道ハイテクAC)が輝いた。28歳の誕生日前日、止まっていた針を6年ぶりに動かす22秒88(+1.8)の日本新。自身の記録を0.01秒更新した。「6年ぶり」に表現される長い苦しみの先に、朗らかな福島の笑顔が咲いた。

日本選手権 女子200m 福島千里 ©月刊陸上競技

新井84m54の大会新、大迫が風格の2冠

 男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC)は自身の大会記録を40㎝更新する84m54で圧巻の3連覇。五輪4大会連続出場を目指した村上幸史(スズキ浜松AC)と、同じく2大会連続代表入りを懸けたディーン元気(ミズノ)は、標準記録に届かず2、5位だった。

 大迫傑(Nike ORPJT)が男子5000m、10000mの2冠を取り、尾西美咲(積水化学)は女子5000mを4連覇して第一人者の風格を漂わせる一方、鈴木亜由子(日本郵政グループ)が女子10000mで初優勝を飾った。

 女子走幅跳では甲斐好美(VOLVER)が昨年に派遣設定(6m84)にピタリ到達していたことが効き、日本選手権初優勝で代表入り。男子走高跳で衛藤昂(AGF)が自己新の2m29、女子3000m障害では高見澤安珠(松山大)が大会新、日本学生新、自己新となる9分44秒22をマークし、土壇場で代表へ食い込んだ。

 さらなる土壇場の代表入りは男子棒高跳の澤野大地(富士通)と男子800mの川元奨(スズキ浜松AC)。日本選手権を好パフォーマンスで制した後、期限内に標準記録をクリアした。棒高跳は3名のフルエントリーが実現した。

 6月11日~12日に長野市営競技場で行われた第100回日本選手権混成では、男子十種競技の中村明彦が8180点をマークして初優勝。途中棄権となった右代啓祐(スズキ浜松AC)とともに、2人が代表入りを果たした。右代は日本選手団全体の「旗手」に指名され、中村は400mハードルで出場した2012年ロンドン大会に続く、2大会連続の五輪を迎える。

リオ五輪でつながれた侍たちの銀リレー

 ブラジルのリオデジャネイロで開催された五輪の陸上は8月12~21日に実施。日本勢のハイライトは、19日の男子4×100mリレー決勝だった。日本は山縣亮太(セイコーホールディングス)、飯塚翔太(ミズノ)、桐生祥秀(東洋大)、ケンブリッジ飛鳥(ドーム)の最強布陣で臨み、国別世界歴代3位・アジア新の37秒60で2位に食い込んだ。2008年北京大会以来、2大会ぶりのメダル獲得である。

 このチームの力が具現化したのが予選。日本新・アジア新の37秒68をマークし、ジャマイカを抑えて堂々の1着通過を果たした。100mで準決勝進出の山縣でアドバンテージを築く。個人では予選落ちだったもののリレーで見違える疾走を見せたのが飯塚と桐生。特に「3走・桐生」はライバル国を圧倒するストロングポイントとなり、世界のトップスプリンターがずらりと並ぶ4走で、100mセミファイナリストのケンブリッジが堂々と勝負する。

 決勝はさらに攻めた。代々のナショナルチームで継続して磨かれたアンダーハンドパスの精度を背景に、次走者のスタートを早めて「思い切り出る」。山縣がジャマイカの100m前世界記録保持者アサファ・パウエル(ジャマイカ)を引き離すほどの働きを見せ、飯塚はジャマイカのヨハン・ブレイク、米国のジャスティン・ガトリンと渡り合う。3走・桐生の優位性を生かし、4走へのバトンゾーンでトップへ。ケンブリッジは、2大会ぶりスプリント3冠へ疾走するジャマイカのウサイン・ボルトに抜かれただけで、米国、カナダの猛追を振り切った。

リオ五輪 4×100mリレー ©月刊陸上競技

競歩でメダル1、入賞1、35歳・澤野が偉業

 男子50km競歩では荒井広宙(自衛隊幾学校)が銅メダルを獲得し、五輪では競歩種目で日本に初めてのメダルをもたらした。男子20km競歩の松永大介(東洋大)、男子棒高跳の澤野大地(富士通)が7位。メダルを含む入賞数は以上の4となった。

リオ五輪 男子50km競歩 荒井広宙 ©月刊陸上競技


 棒高跳の澤野は35歳。5m45、5m60を難なく1回で成功し。予選を突破。決勝は5m65の挑戦は実らなかったものの、5m50を1回目で越えたことが効き、7位をつかんだ。この種目では日本勢64年ぶりの入賞である。

 入賞には届かなかったものの、男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC/11位)や上原美幸(第一生命グループ/15位)が決勝進出、男子400mハードルでは野澤啓佑(ミズノ)が準決勝に進出するなどの健闘が光った。

男女マラソンの入賞ゼロは男子が2大会ぶり、女子は3大会連続となり、苦しい戦いになった。

「東京五輪」への歩み、ジュニア勢が躍動

 リオ五輪後の秋。桐生祥秀(東洋大)が日本インカレで短距離3冠を達成すると、全日本実業団対抗選手権では山縣亮太(セイコーホールディングス)がケンブリッジ飛鳥(ドーム)に先着し、10秒03(+0.5)と今季3度目の自己新をマークした。オリンピアンたちが余勢を見せる。

 この年は、4年後の東京五輪に向けた機運も高まり始めていた。特にジュニア勢に勢いがあり、5月のゴールデングランプリ川崎では、女子やり投の北口榛花(日大)が61m38の学生新&U20日本新、男子棒高跳の江島雅紀(荏田高・神奈川)が5m42の高校新、女子400mハードルの石塚晴子(東大阪大)が56秒75のU20日本新を記録。日本選手権の女子200mでは福島に次ぐ2位を占めたのは高校2年の齋藤愛美(倉敷中央高・岡山)で、23秒46のU20日本新・高校新。齋藤は秋のU20日本選手権でこれを23秒45(+0.9)へ更新している。江島はこの年内に3度、1月に海外の室内大会で跳んだ5m50を含めると4度、高校記録を伸ばしている。

 五輪に先立つ7月のU20世界選手権では、竹田一平(中大)、山下潤(筑波大)、犬塚渉(順大)、大嶋健太(日大)で臨んだ男子4×100mリレーで、米国に次ぐ銀メダルを獲得。古谷拓夢(早大)は男子110mハードルの一般規格、ジュニア規格の両方でU20日本記録を作った。

記事提供:月刊陸上競技