バーチャルミュージアム

HISTORY歴史歴史の説明を掲載します。

日本陸上競技連盟史

2023年度

2023年度
令和5年4月~令和6年3月


北口が金、川野が銅
日本勢の入賞は過去最多の「11」

8月19日から27日まで、9日間に渡ってハンガリーの首都・ブダペストで開催された第19回世界選手権で、女子やり投の北口榛花(JAL)が快挙を成し遂げた。

ワールドランキング1位で迎えた北口は、直前に不調に陥りながらも順当に予選を通過し、決勝では最終投てきでビッグスローを見せた。「最後は良くても悪くても後悔しないように臨もうと思っていました」と6投目に66m73をマーク。4位から一気に首位に立ち、逆転で金メダルに輝いた。前年のオレゴン大会に続き、またしても土壇場で力を発揮。日本女子がマラソン以外の種目で世界の頂点に立つのは初めてのことだった。
ブダペスト世界陸上 北口榛花 ©月刊陸上競技

男子35km競歩では、川野将虎(旭化成)が粘り強いレースで3位。前回のオレゴン大会(2位)に続き2大会連続でメダルを獲得した。同種目では野田明宏(自衛隊体育学校)も6位に入賞し、女子35km競歩では園田世玲奈(NTN)が7位に入った。

ブダペスト世界陸上 川野将虎 ©月刊陸上競技


男子110mハードルでは泉谷駿介(住友電工)が、日本初となるファイナルへの扉をこじ開けた。東京五輪、オレゴン世界選手権とあと一歩届かずにいたが、準決勝で13秒16をマークして組1着となり、ついに決勝に駒を進めた。メダルには惜しくも届かなかったが、13秒19で5位入賞を果たした。

ブダペスト世界陸上 泉谷駿介 ©月刊陸上競技


女子中長距離では3大会連続出場の田中希実(New Balance)が躍動。1500mは準決勝で組最下位に終わったが、5000mでは予選で14分37秒98の日本新記録を樹立。従来の記録を約15秒も更新して決勝に進むと、決勝でも14分台(14分58秒99)で8位入賞を果たした。

男子100mではサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が2大会連続でファイナリストとなり、決勝は10秒04で6位に入った。サニブラウンは4×100mリレーでも4走を務め、5位入賞を果たした。

男子3000m障害では、三浦龍司(順大)が6位に入賞。なお、三浦は東京五輪で7位に入っているが、世界選手権における日本勢のトラック種目連続入賞は史上初だった。

女子10000mでは廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が7位、男子走高跳では赤松諒一(アワーズ)が8位に入った。日本勢のメダルを含む入賞は合計「11」と、過去最多を更新した。

入賞には届かなかったものの、男子400mでは歴史が動いた。予選で佐藤拳太郎(富士通)が44秒77で走り、高野進が1991年に打ち立てたトラック種目最古の日本記録を0秒01更新した。なお、佐藤風雅(ミズノ)も予選で44秒88と、日本人3人目の44秒台をマーク。中島佑気ジョセフ(東洋大)も準決勝で45秒04と、44秒台に肉薄した。3人そろって準決勝に進んだが、決勝進出にはあと一歩届かず。3人がバトンをつないだ4×400mリレーは、日本歴代2位の3分00秒39をマークしながらも、予選敗退となった。

春から国際舞台目指して好記録続出

2023年はブダペスト世界選手権の他にも、7月12日~16日にバンコク(タイ)でアジア選手権、9月23日~10月8日に杭州(中国)でアジア大会があり、春先の日本グランプリシリーズから好記録が続出した。

雨の中で行われた4月29日の織田記念(広島広域)では北口が64m50を投げて優勝し、ロード種目を除いてブダペスト世界選手権の内定第1号となった。北口は1週間後の木南記念でも64m43を投げ、上々のシーズンインとなった。

活況の女子100mハードルでは、織田記念で田中佑美(富士通)が日本人4人目の12秒台となる12秒97をマーク。木南記念では寺田明日香(ジャパンクリエイト)が日本歴代2位タイの12秒86で優勝し、2年ぶりに自己記録を更新。田中も12秒91と記録を伸ばした。

5月3日の静岡国際では男子400mで好記録。佐藤拳太郎(富士通)が8年ぶりの自己ベストを更新し、日本歴代7位の45秒31で優勝。44秒台へカウントダウンに入った。中島佑気ジョセフ(東洋大)も日本歴代9位の45秒39をマークした。

女子跳躍勢も躍動。走幅跳では秦澄美鈴(シバタ工業)が、4月23日の兵庫リレーカーニバル、静岡国際と連勝し、静岡国際では日本歴代4位となる6m75のビッグジャンプを披露した。

三段跳では森本麻里子(内田建設AC)が安定した強さを見せ、織田記念で13m68、木南記念では13m80を跳んだ。髙島真織子(九電工)も好調で、織田記念で13m64、木南記念では日本歴代4位の13m75を跳び、森本に肉薄した。

5月4日のゴールデンゲームズinのべおかでは、東京国際大の留学生、リチャード・エティーリが13分00秒17の日本学生新記録を打ち立てた。日本勢では伊藤達彦(Honda)が日本歴代8位の13分17秒65をマークする。ブダペスト世界選手権などの日本代表選考会を兼ねた10000mは、男子は塩尻和也(富士通)が27分46秒82で優勝、女子はマラソンで世界選手権に内定している加世田梨花(ダイハツ)が31分49秒56で制した。

5月21日に神奈川・日産スタジアムで行われた世界陸連コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリ横浜(神奈川・日産スタジアム)では、男子100mにオレゴン世界選手権を制したフレッド・カーリー(アメリカ)が登場。予選で9秒88、決勝が9秒91と9秒台を連発し、スタンドを沸かせた。

男子走幅跳では吉田弘道(神崎郡陸協)が金星。日本歴代3位の8m26を跳んで、オレゴン世界選手権でアジア人初の金メダリストとなった王嘉男(中国)に競り勝った。男子400mでは絶好調の中島が、3戦連続の自己記録となる45秒31(日本歴代7位タイ)をマークし、海外勢をも抑えて優勝した。

泉谷が2年ぶりの日本新記録

第107回日本選手権は6月1日から4日まで大阪市のヤンマースタジアム長居で開催された。大会2日目は大雨警報が発令されるアクシデントもあったが、日本記録2つを含め大会新記録が6つ誕生した。

ビッグサプライズは大会最終日の男子110mハードル決勝。向かい風0.9mのなか、泉谷駿介(住友電工)が13秒04と2年ぶりに自身の日本記録を更新して優勝を飾った。セイコーゴールデングランプリでも13秒07の好記録を出しており、世界水準の力を身につけてきた。

女子三段跳では森本麻里子(内田建設AC)が14m16のビッグジャンプ。1999年に花岡麻帆が作った従来の記録を一気に12cmも上回り、24年ぶりの日本新記録を打ち立てて5連覇を達成した。

女子100mハードルは大会初の12秒台決着となった。4人が並ぶようにフィニッシュラインに駆け込む大混戦を制したのは寺田明日香(ジャパンクリエイト)「で、2年ぶりに頂点に立った。

激戦の男子400mは、中島佑気ジョセフ(東洋大)が日本歴代5位の45秒15で初優勝を果たした。

DLで北口が圧巻のパフォーマンス

ダイヤモンドリーグ(DL)でも日本勢が活躍を見せた。世界選手権を控えるなか、6月9日のパリ大会では、女子やり投の北口が65m09をマークして大会2連覇を達成。その後、6月30日のローザンヌ大会でも2位を占め、さらに7月16日のシレジア大会では67m04の日本新記録を樹立して優勝を飾る。世界選手権後の9月8日のブリュッセル大会でも67m38の日本新記録で制覇し、さらにはファイナルも日本人初優勝の快挙を成し遂げた。今季のDLで5戦4勝と圧巻の強さを見せ、年間女王に輝く。

日本選手権の勢いそのままに、男子110mハードルでは泉谷駿介(住友電工)が躍動。ローザンヌ大会で接戦を制し13秒22で優勝を果たした。日本勢のDL優勝は北口に続き2人目、男子初の快挙だった。7月23日のロンドン大会では、世界選手権で連勝中のグラント・ホロウェイ(アメリカ)に肉薄し、13秒06で2位。泉谷はファイナルにも初出場し、4位と健闘した。

パリ大会では男子3000m障害で三浦が自身最高順位の2位に入った。ラメチャ・ギルマ(エチオピア)が19年ぶりの世界記録となる7分52秒11をマークしたレースで、三浦は自身の日本記録を0秒01更新し、8分09秒91の日本新記録を樹立した。三浦は、2年連続で出場したファイナルでも5位に食い込んだ。

ローザンヌ大会では男子走幅跳の橋岡優輝(富士通)が、初出場ながら3位に入る活躍を見せる。急遽出番が回ってきたファイナルでも3位に入った。ファイナルには日本勢が過去最多の5人も出場し、女子5000mでも田中が6位と健闘した。

2つのアジアの舞台で代表たちが奮闘

7月12日から16日までタイ・バンコクで開かれたアジア選手権では、高温多湿の過酷なコンディションのなか、好記録が相次いだ。

女子走幅跳では、秦澄美鈴(シバタ工業)が最終6回目に6m97を跳び、17年ぶりの日本記録を打ち立てて金メダルに輝いた。女子三段跳でも、日本記録保持者となった森本麻里子(内田建設AC)が14m超を連発し、6回目に14m06を跳んで逆転に次ぐ逆転で優勝を果たした。

アジア選手権 秦澄美鈴 ©月刊陸上競技

男子スプリント種目でも日本勢が活躍。100mは栁田大輝(東洋大)が日本歴代7位タイの10秒02で優勝。200mは鵜澤飛羽(筑波大)が日本歴代8位タイの20秒23で制した。さらに、400mは佐藤拳太郎(富士通)が日本歴代2位の45秒00をマークし、アジア王者となった。日本は金メダル16個を含め、合計37個のメダルを獲得した。

国際舞台での活躍は続く。2年延期を経て中国・成都で開かれたワールドユニバーシティゲームズでは、男子110mハードルで豊田兼(慶大)が金メダル。シニア、ジュニアなど全カテゴリーを通じて、この種目で初めての世界大会の頂点に立った。

中国・杭州で開かれた第19回アジア大会の陸上競技は9月29日から10月5日まで行われ、男子200mの上山紘輝(住友電工)、男子110mハードルの高山峻野(ゼンリン)が金メダルを獲得。女子棒高跳では諸田実咲(アットホーム)が、自身の日本記録を7㎝更新する4m48を跳んで銀メダルを獲得した。

ハイパフォーマンスが相次ぐ男子110mハードルでは、秋にも好記録が誕生。9月に開催された日本インカレで村竹ラシッド(順大)が13秒04で優勝。大学の先輩である泉谷の日本記録に並び、泉谷の学生記録を0.02秒塗り替えた。奇しくも、向かい風0.9mという条件も泉谷と同じだった。

一方、泉谷は全日本実業団対抗選手権の走幅跳に出場し、8m10の自己新記録で優勝を果たした。

12月10日に行われた日本選手権10000mでは、初めて電子ペーサーが導入されたこともあって、男女ともに日本歴代上位の記録が塗り替えられた。

男子は、マルチな活躍を見せる塩尻和也(富士通)が27分09秒80の日本新記録を打ち立てて、この種目で初優勝を果たした。2位の太田智樹(トヨタ自動車)は27分12秒53、3位の相澤晃(旭化成)は27分13秒04と、3位までが相澤が持っていた従来の日本記録(27分18秒75)を大きく上回った。4位の田澤廉(トヨタ自動車)、5位の小林歩(NTT西日本)も日本歴代10傑に名前を連ねた。女子は廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が30分55秒29で3連覇を達成。4位までが31分を切るハイレベルなレースだった。

前田穂南が日本人初の2時間19分突破

ロードレースでも歴史は動く。1月28日の大阪国際女子マラソンでは、前田穂南(天満屋)がアジア新記録、日本新記録となる2時間18分59秒を打ち立てた(2位)。19年もの間、破られることのなかった野口みずきの日本記録を13秒上回り、日本人女子で初めて2時間18分台突入を果たした。

大阪国際女子マラソン 前田穂南 ©月刊陸上競技

男子は、2月25日の大阪マラソンで、大学3年生の平林清澄(國學院大)が初マラソン日本最高、日本学生新記録の2時間6分18秒を打ち立てて優勝を飾った。

日本選手権20㎞競歩では、池田向希(旭化成)が世界歴代3位の1時間16分51秒で連覇を飾り、パリ五輪の切符をつかんだが、のちにドーピング違反として記録が取り消された。

3月1日~3日に英国・グラスゴーで行われた世界室内選手権では、男子60mで多田修平(住友電工)が7位、女子3000mで田中が8位に入り、日本勢としては1999年以来の入賞を果たした。

田中は、3月30日にセルビア・ベオグラードで開催された世界クロスカントリー選手権でも、男女混合4×2kmリレーに出場して7位入賞に貢献した。U20男子団体で4位、シニア女子とU20女子も団体で6位入賞と健闘した。

シニアの活躍に文量を割いたが、ジュニア世代でも新記録が誕生している。男子3000m障害で永原颯磨(佐久長聖高)が、三浦が持っていた従来の記録を塗り替えて、8分32秒12の高校記録を樹立。男子八種競技では高橋諒(桐朋高)が11月に6264点の高校新記録を打ち立てた。

女子は、400mハードルで瀧野未来(京都橘高)が56秒90の高校新。3000mではカリバ・カロライン(神村学園高)が8分40秒86の日本高校国内国際記録を樹立した。


記事提供:月刊陸上競技