日本陸上競技連盟史
2024年度
2024年度
令和6年4月~令和7年3月
女子やり投の北口らDLで日本勢が躍動
パリ五輪イヤーの幕開け。女子やり投の世界女王、北口榛花(JAL)が好スタートを切った。初戦を4月27日のダイヤモンドリーグ(DL)蘇州大会で迎えると、4回目までは振るわなかったが最終投てきで62m97を投げて逆転優勝を飾った。前年の世界選手権で世界一になってから初の国内試合になった5月5日の水戸招待(茨城)は61m83で優勝。5月19日のセイコーゴールデングランプリ(東京・国立競技場)も63m45で制した。その後、拠点とするチェコで行われたゴールデンスパイクでも優勝し、貫禄を示した。
DLには、第1戦の廈門、第2戦の蘇州と2戦続けて、男子110mハードルに泉谷駿介(住友電工)が出場し、厦門は13秒17で3位、蘇州は13秒23で2位と上々の結果を残して早々にパリ五輪代表に内定した。男子走高跳の真野友博(九電工)も2試合ともに出場し、4位タイ、7位に入った。
5月10日の第3戦ドーハ大会(カタール)では、男子3000m障害の三浦龍司(SUBARU)が8分13秒96で5位。5月25日の第5戦ユージン大会(米国)では、女子5000mの田中希実(New Balance)が14分47秒69で11位。さらに、5月30日の第6戦オスロ大会(スイス)では、男子100mに出場したサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が9秒99で2位に入った。いずれもそれぞれの種目の参加標準記録をクリアし、パリ五輪代表に内定した。オスロ大会女子3000mでは、田中が自身の日本記録を塗り替える8分34秒09をマークしている。
また、ドーハ大会では男子やり投のディーン元気(ミズノ)が7位。ユージン大会では、男子110mハードルで泉谷駿介(住友電工)が7位、男子100mでは栁田大輝(東洋大)が初参戦(8位)と、春先から日本勢の海外挑戦が目立った。
4月21日にトルコ・アンタルヤで開催された世界競歩チーム選手権では、パリ五輪で初実施となる男女混合リレーで池田向希(旭化成)、岡田久美子(富士通)のペアが2時間57分04秒で銀メダルに輝いた(のちに失格扱いに)。また、男子20km競歩では古賀友太(大塚製薬)が4位に入り、団体では銀メダルを獲得した。
5月4、5日には世界リレーがバハマ・ナッソーで開催。日本は、メダルにはあと一歩届かなかったが、男子4×100m、4×400mともに4位となり、パリ五輪の出場権を手にした。
パリ五輪代表入り懸けて国内大会も盛況
国内各地では日本グランプリシリーズが行われた。4月13日の金栗記念(熊本総合)では、三浦龍司(SUBARU)が社会人デビュー戦を迎えた。日本記録を持つ3000m障害ではなく1500mに出場し、3分39秒78の好タイムで日本人トップの2位に入った。三浦は4月29日の織田記念(広島広域)は3000m障害に出場し、雨の中で貫禄のレースを見せて優勝(8分22秒07)した。
織田記念では、男子110mハードルの日本記録保持者、村竹ラシッド(JAL)が社会人デビュー戦となり、13秒29で制した。
女子中長距離の田中希実(New Balance)は、金栗記念で800mと1500mに出場していずれも2位。4月21日の兵庫リレーカーニバル(ユニバー記念)では1500mで4分07秒49の大会新記録を打ち立てて優勝を果たした。
5月3日の静岡国際(小笠山総合)では、男子ハンマー投の福田翔大(住友電工)が日本歴代4位の73m00を放って優勝した。静岡国際では若い力が躍動。男子800mでは、前年に2年生でインターハイを制した落合晃(滋賀学園高)が日本高校記録とU20日本記録を0秒05更新する1分46秒54の新たな記録を打ち立てて優勝を飾った。落合は4月24日~27日にUAE・ドバイで開催されたU20アジア選手権でも金メダルを獲得しており、短期間での連戦で快挙を成し遂げた。
女子800mでは16歳の久保凛(東大阪大敬愛高)が快走を連発。金栗記念で田中に先着して優勝すると、静岡国際では高校歴代3位(高2最高)、U18日本新記録となる2分03秒57をマークし、シニアを相手に連勝した。
しかしながら、これらの活躍はその後に成し遂げる偉業への序章に過ぎなかった。
静岡国際と同日の夜、パリ五輪代表選考会を兼ねた日本選手権10000mが開催された。男子は葛西潤(旭化成)が日本歴代4位となる27分17秒46の好記録で初優勝を成し遂げた。2位は2年連続で太田智樹(トヨタ自動車)。3位には大学2年生の前田和摩(東農大)が入り、U20日本新、日本人学生最高となる27分21秒52をマークした。女子は、3連覇中の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が不出場で、五島莉乃(資生堂)が日本歴代6位の30分53秒31で初優勝した。
5月のセイコーゴールデングランプリでは、男子400mハードルの豊田兼(慶大)が、後半に順位を上げて逆転優勝。記録も、自己記録を0秒11更新し、日本歴代5位、学生歴代3位となる48秒36をマークした。
また、東日本実業団選手権では、男子5000m競歩で濱西諒(サンベルクス)が18分16秒97の日本新記録を樹立。20㎞競歩で内定しているパリ五輪に向けて弾みをつけた。
第108回日本選手権は6月27日~30日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催された。
男子400mハードルでは、豊田兼がさらに記録を伸ばし、日本歴代3位の47秒99で優勝。日本人3人目の48秒切りを果たして五輪代表に内定した。
男子110mハードルは、村竹が13秒07の好記録で初優勝。女子100mハードルでは、福部真子(日本建設工業)が自身の日本記録に迫る12秒75を準決勝でマークし、決勝でも2年ぶりの勝利をつかんだ。日本選手権後の7月20日に行われた実業団・学生対抗で12秒69の日本新記録を樹立。初の五輪に向けて勢いづいた。
男女800mでは高校生チャンピオンが誕生。男子の落合晃(滋賀学園高)は予選でU20日本新・高校新となる1分45秒82をマークし、決勝も圧勝。だが、パリ五輪の参加標準(1分44秒70)を狙っていただけに、初優勝にも悔しさを口にした。女子の久保は冷静なレース運びで、自己記録を更新する2分03秒13で快勝した。
2人はその後も圧巻のパフォーマンスを連発。7月15日に奈良で行われた関西学連長距離強化記録会では、久保が自己記録を一気に3秒以上更新。日本人女子で初めて2分の壁を破る、1分59秒93の日本新記録を打ち立てた。実に19年ぶりの新記録誕生だった。
男子の落合はインターハイで快挙。35度を超える猛暑のなか、留学生のフェリックス・ムティアニ(山梨学院)に競り勝って、日本人初の1分45秒切りとなる1分44秒80の日本記録を打ち立てて連覇を成し遂げた。
北口が五輪でも金。貫禄の優勝を1投目に決める。
2024年7月26日~8月11日
陸上競技:8月1日~8月11日
第33回オリンピック競技大会はフランスの首都・パリで、7月26日~8月11日に開催。陸上競技は8月1日から11日まで、パリ郊外サン=ドニのスタッド・ド・フランスで行われた。
女子やり投の北口がまたしても快挙。北口といえば、最終投てきでの逆転劇が代名詞になりつつあったが、パリ五輪では決勝の1投目でシーズンベストの65m80をマーク。これが勝負を決める1投となり、マラソンを除く女子トラック&フィールドでは日本史上初となる五輪の金メダルを獲得した。
男子走高跳では赤松諒一(SEIBU PRINCE)が自己新となる2m31を1回でクリアし、この種目で日本勢88年ぶりの入賞となる5位に入った。
男子110mハードルは、泉谷駿介(住友電工)が準決勝で敗退したが、村竹ラシッド(JAL)がプラス通過ながら決勝に進出。13秒21で5位入賞を果たした。この種目の入賞は日本人初の快挙だった。男子3000m障害では、三浦が8位入賞。東京五輪の7位に続き、2大会連続の入賞を成し遂げている。
男女のマラソンも奮闘。男子の赤﨑暁(九電工)、女子の鈴木優花(第一生命グループ)ともに6位入賞を果たした。史上最も過酷と言われた難コースで、赤﨑が2時間7分32秒、鈴木が2時間24分02秒と、ともに自己新記録をマークした。
男子4×100mリレーは日本歴代4位タイの37秒78で、2大会ぶりの入賞となる5位。男子4×400mリレーは2分58秒33のアジア新記録で6位に入り、5大会ぶりの入賞を果たした。
競歩陣はメダルには届かなかったが、男子20㎞競歩で池田向希(旭化成)が7位(のちに失格)、古賀友太(大塚製薬)が8位とダブル入賞。初開催の混合競歩リレーでは、川野将虎(旭化成)・岡田久美子(富士通)ペアが8位に入った。
メダルは北口の金メダルのみだったが、入賞は戦後最多の11を数えた(のちに10に修正)。
8月27日~31日にペルーのリマで開催されたU20世界選手権では、若い力が躍動。男子800mに出場した日本記録保持者の落合晃(滋賀学園高)が銅メダル。世界陸連主催の世界大会で、この種目でメダルを獲得するのは日本初の快挙だった。
男子棒高跳では吉田陸哉(関大)が5m40で銀メダルを獲得。男子走高跳では高校記録保持者の中谷魁聖(福岡第一高)が2m19で銅メダルを獲得した。
秋季以降も快挙に沸く
競歩では男子20㎞、男子35㎞で世界新が誕生
秋も海外から快挙の報せが届く。9月13、14日にベルギー・ブリュッセルで開催されたダイヤモンドリーグ・ファイナルに日本勢は5人が出場。女子やり投では、北口が最終投てきでシーズンベストとなる66m13を投げて逆転で優勝し、2年連続で年間チャンピオンに輝いた。
男子やり投ではディーン元気(ミズノ)が5位に入った。男子100mのサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)、男子110mハードルの泉谷、女子5000mの田中希実(New Balance)は、それぞれ6位だった。
9月29日のベルリン・マラソンでは、男女ともに好記録。男子は池田耀平(Kao)が日本歴代2位の2時間5分12秒で6位に入賞。女子は細田あい(エディオン)が日本歴代7位の2時間20分31秒で5位、松田瑞生(ダイハツ)が日本歴代8位の2時間20分42秒で6位に入った。
「国民体育大会」から名称を改めた「国民スポーツ大会」(10月11日~15日、佐賀)では、男女の300mで日本新記録が誕生した。男子は、優勝した今泉堅太(Team SSP)が予選で32秒20をマーク。女子は、ペルー国籍のフロレス・アリエ(日体大)が36秒79の国内最高で優勝し、2位の松本奈菜子(東邦銀行)が36秒93を出して日本記録保持者となった。
競歩では特大記録が続出。10月27日の全日本35km競歩高畠大会で、川野将虎(旭化成)が快挙。2時間21分47秒の世界新記録を樹立して優勝し、東京世界選手権の内定第1号となった。
年が明けて2025年2月16日の日本選手権20km競歩の男子では、山西利和(愛知製鋼)が1時間16分10秒の世界新記録を樹立した。女子は藤井菜々子(エディオン)が、1時間26分33秒の日本新記録を打ち立てて3連覇を果たした。
マラソンでも好記録が続く。12月1日の福岡国際マラソンでは吉田祐也(GMOインターネットグループ)が日本歴代3位の2時間5分16秒で4年ぶりの優勝を飾った。
年が明けて、1月26日の大阪国際女子マラソンでは、サークル出身という異例の経歴を持つ社会人1年目の小林香菜(大塚製薬)が、日本歴代10位の2時間21分19秒で日本人トップの2位に入った。パリ五輪6位の鈴木優花(第一生命グループ)も3位に入り、自己記録を大幅に更新する2時間21分33秒の好記録だった。
2月2日の別府大分毎日マラソンでは、大学卒業後は競技から離れることを表明していた若林宏樹(青学大)が、日本学生新記録、日本歴代7位となる2時間6分07秒で日本人トップの2位になった。
別大と同じ日、ハーフマラソンでも快挙。香川丸亀国際ハーフマラソンで、3位に入った太田智樹(トヨタ自動車)が59分27秒の日本新記録を打ち立てた。4位の篠原倖太朗(駒大)も従来の日本記録を上回る59分30秒で走り、日本学生新記録を樹立した。これまで日本勢には1時間の壁が立ちはだかっていたが、一気に2人が59分台に突入した。
また、併催の日本学生ハーフマラソン選手権を制した工藤慎作(早大)も1時間0分06秒と、日本歴代4位タイの好記録をマークした。女子も5位の加世田梨花(ダイハツ)が日本歴代4位の1時間7分53秒をマークした。
さらに、2月24日の大阪マラソンでは、近藤亮太(三菱重工)が初マラソン日本最高、日本歴代5位となる2時間5分39秒で日本人最上位の2位に入った。6位の黒田朝日(青学大)は、先輩の若林の記録を上回り、2時間6分05秒の学生新記録を打ち立てた。
室内競技会でも好記録ラッシュ。2月8日にチェコで開催されたフストペチェ・ジャンプでは、高橋渚(センコー)が1m92で2位に入った。この記録は、日本歴代5位タイで、39年ぶりの室内日本人最高記録だった。
女子中長距離の田中希実(New Balance)はアメリカで転戦し、1月31日にボストン大で開かれた競技会の1000mでは2分39秒06で1着。2日後のニューバランスGP1マイルでは4分28秒54で6位。いずれもショートトラックの日本新記録だった。2月8日のミルローズ・ゲームは3000mで、屋外の日本記録をも上回る8分33秒52で6位。2月15日のボストン大デヴィッド・ヘメリー・バレンタイン招待5000mではショートトラック日本初の14分台となる14分51秒26と、4戦連続でショート日本新をマークした。
ヨーロッパで室内を転戦した100mハードルの田中佑美(富士通)は、60mハードルで好記録を連発。2月8日にフランス・メッスで開かれた大会で8秒00の日本新を樹立した。
女子400mの松本奈菜子(東邦銀行)もショート日本新を連発し、3月1日にカザフスタンで53秒15を叩き出した。
また、男子中距離では、樋口諒(カンザス大)が1000mで2分21秒51のショート日本新を樹立。800mは日本新の応酬となった。2月8日に金子魅玖人(ARCYELL)が1分47秒16をマークすると、その2週間後には石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41に更新した。
記事提供:月刊陸上競技
令和6年4月~令和7年3月
女子やり投の北口らDLで日本勢が躍動
パリ五輪イヤーの幕開け。女子やり投の世界女王、北口榛花(JAL)が好スタートを切った。初戦を4月27日のダイヤモンドリーグ(DL)蘇州大会で迎えると、4回目までは振るわなかったが最終投てきで62m97を投げて逆転優勝を飾った。前年の世界選手権で世界一になってから初の国内試合になった5月5日の水戸招待(茨城)は61m83で優勝。5月19日のセイコーゴールデングランプリ(東京・国立競技場)も63m45で制した。その後、拠点とするチェコで行われたゴールデンスパイクでも優勝し、貫禄を示した。
DLには、第1戦の廈門、第2戦の蘇州と2戦続けて、男子110mハードルに泉谷駿介(住友電工)が出場し、厦門は13秒17で3位、蘇州は13秒23で2位と上々の結果を残して早々にパリ五輪代表に内定した。男子走高跳の真野友博(九電工)も2試合ともに出場し、4位タイ、7位に入った。
5月10日の第3戦ドーハ大会(カタール)では、男子3000m障害の三浦龍司(SUBARU)が8分13秒96で5位。5月25日の第5戦ユージン大会(米国)では、女子5000mの田中希実(New Balance)が14分47秒69で11位。さらに、5月30日の第6戦オスロ大会(スイス)では、男子100mに出場したサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が9秒99で2位に入った。いずれもそれぞれの種目の参加標準記録をクリアし、パリ五輪代表に内定した。オスロ大会女子3000mでは、田中が自身の日本記録を塗り替える8分34秒09をマークしている。
また、ドーハ大会では男子やり投のディーン元気(ミズノ)が7位。ユージン大会では、男子110mハードルで泉谷駿介(住友電工)が7位、男子100mでは栁田大輝(東洋大)が初参戦(8位)と、春先から日本勢の海外挑戦が目立った。
4月21日にトルコ・アンタルヤで開催された世界競歩チーム選手権では、パリ五輪で初実施となる男女混合リレーで池田向希(旭化成)、岡田久美子(富士通)のペアが2時間57分04秒で銀メダルに輝いた(のちに失格扱いに)。また、男子20km競歩では古賀友太(大塚製薬)が4位に入り、団体では銀メダルを獲得した。
5月4、5日には世界リレーがバハマ・ナッソーで開催。日本は、メダルにはあと一歩届かなかったが、男子4×100m、4×400mともに4位となり、パリ五輪の出場権を手にした。
パリ五輪代表入り懸けて国内大会も盛況
国内各地では日本グランプリシリーズが行われた。4月13日の金栗記念(熊本総合)では、三浦龍司(SUBARU)が社会人デビュー戦を迎えた。日本記録を持つ3000m障害ではなく1500mに出場し、3分39秒78の好タイムで日本人トップの2位に入った。三浦は4月29日の織田記念(広島広域)は3000m障害に出場し、雨の中で貫禄のレースを見せて優勝(8分22秒07)した。
織田記念では、男子110mハードルの日本記録保持者、村竹ラシッド(JAL)が社会人デビュー戦となり、13秒29で制した。
女子中長距離の田中希実(New Balance)は、金栗記念で800mと1500mに出場していずれも2位。4月21日の兵庫リレーカーニバル(ユニバー記念)では1500mで4分07秒49の大会新記録を打ち立てて優勝を果たした。
5月3日の静岡国際(小笠山総合)では、男子ハンマー投の福田翔大(住友電工)が日本歴代4位の73m00を放って優勝した。静岡国際では若い力が躍動。男子800mでは、前年に2年生でインターハイを制した落合晃(滋賀学園高)が日本高校記録とU20日本記録を0秒05更新する1分46秒54の新たな記録を打ち立てて優勝を飾った。落合は4月24日~27日にUAE・ドバイで開催されたU20アジア選手権でも金メダルを獲得しており、短期間での連戦で快挙を成し遂げた。
女子800mでは16歳の久保凛(東大阪大敬愛高)が快走を連発。金栗記念で田中に先着して優勝すると、静岡国際では高校歴代3位(高2最高)、U18日本新記録となる2分03秒57をマークし、シニアを相手に連勝した。
しかしながら、これらの活躍はその後に成し遂げる偉業への序章に過ぎなかった。
静岡国際と同日の夜、パリ五輪代表選考会を兼ねた日本選手権10000mが開催された。男子は葛西潤(旭化成)が日本歴代4位となる27分17秒46の好記録で初優勝を成し遂げた。2位は2年連続で太田智樹(トヨタ自動車)。3位には大学2年生の前田和摩(東農大)が入り、U20日本新、日本人学生最高となる27分21秒52をマークした。女子は、3連覇中の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が不出場で、五島莉乃(資生堂)が日本歴代6位の30分53秒31で初優勝した。
5月のセイコーゴールデングランプリでは、男子400mハードルの豊田兼(慶大)が、後半に順位を上げて逆転優勝。記録も、自己記録を0秒11更新し、日本歴代5位、学生歴代3位となる48秒36をマークした。
また、東日本実業団選手権では、男子5000m競歩で濱西諒(サンベルクス)が18分16秒97の日本新記録を樹立。20㎞競歩で内定しているパリ五輪に向けて弾みをつけた。
第108回日本選手権は6月27日~30日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催された。
男子400mハードルでは、豊田兼がさらに記録を伸ばし、日本歴代3位の47秒99で優勝。日本人3人目の48秒切りを果たして五輪代表に内定した。

日本選手権 豊田兼 ©月刊陸上競技
男子110mハードルは、村竹が13秒07の好記録で初優勝。女子100mハードルでは、福部真子(日本建設工業)が自身の日本記録に迫る12秒75を準決勝でマークし、決勝でも2年ぶりの勝利をつかんだ。日本選手権後の7月20日に行われた実業団・学生対抗で12秒69の日本新記録を樹立。初の五輪に向けて勢いづいた。
男女800mでは高校生チャンピオンが誕生。男子の落合晃(滋賀学園高)は予選でU20日本新・高校新となる1分45秒82をマークし、決勝も圧勝。だが、パリ五輪の参加標準(1分44秒70)を狙っていただけに、初優勝にも悔しさを口にした。女子の久保は冷静なレース運びで、自己記録を更新する2分03秒13で快勝した。

日本選手権 落合晃 ©月刊陸上競技


日本選手権 久保凛 ©月刊陸上競技
2人はその後も圧巻のパフォーマンスを連発。7月15日に奈良で行われた関西学連長距離強化記録会では、久保が自己記録を一気に3秒以上更新。日本人女子で初めて2分の壁を破る、1分59秒93の日本新記録を打ち立てた。実に19年ぶりの新記録誕生だった。
男子の落合はインターハイで快挙。35度を超える猛暑のなか、留学生のフェリックス・ムティアニ(山梨学院)に競り勝って、日本人初の1分45秒切りとなる1分44秒80の日本記録を打ち立てて連覇を成し遂げた。
北口が五輪でも金。貫禄の優勝を1投目に決める。
2024年7月26日~8月11日
陸上競技:8月1日~8月11日
第33回オリンピック競技大会はフランスの首都・パリで、7月26日~8月11日に開催。陸上競技は8月1日から11日まで、パリ郊外サン=ドニのスタッド・ド・フランスで行われた。
女子やり投の北口がまたしても快挙。北口といえば、最終投てきでの逆転劇が代名詞になりつつあったが、パリ五輪では決勝の1投目でシーズンベストの65m80をマーク。これが勝負を決める1投となり、マラソンを除く女子トラック&フィールドでは日本史上初となる五輪の金メダルを獲得した。

パリ五輪 北口榛花 ©月刊陸上競技

パリ五輪 北口榛花 ©月刊陸上競技

パリ五輪 北口榛花 ©月刊陸上競技
男子走高跳では赤松諒一(SEIBU PRINCE)が自己新となる2m31を1回でクリアし、この種目で日本勢88年ぶりの入賞となる5位に入った。

パリ五輪 赤松諒一 ©月刊陸上競技
男子110mハードルは、泉谷駿介(住友電工)が準決勝で敗退したが、村竹ラシッド(JAL)がプラス通過ながら決勝に進出。13秒21で5位入賞を果たした。この種目の入賞は日本人初の快挙だった。男子3000m障害では、三浦が8位入賞。東京五輪の7位に続き、2大会連続の入賞を成し遂げている。
男女のマラソンも奮闘。男子の赤﨑暁(九電工)、女子の鈴木優花(第一生命グループ)ともに6位入賞を果たした。史上最も過酷と言われた難コースで、赤﨑が2時間7分32秒、鈴木が2時間24分02秒と、ともに自己新記録をマークした。
男子4×100mリレーは日本歴代4位タイの37秒78で、2大会ぶりの入賞となる5位。男子4×400mリレーは2分58秒33のアジア新記録で6位に入り、5大会ぶりの入賞を果たした。
競歩陣はメダルには届かなかったが、男子20㎞競歩で池田向希(旭化成)が7位(のちに失格)、古賀友太(大塚製薬)が8位とダブル入賞。初開催の混合競歩リレーでは、川野将虎(旭化成)・岡田久美子(富士通)ペアが8位に入った。
メダルは北口の金メダルのみだったが、入賞は戦後最多の11を数えた(のちに10に修正)。
8月27日~31日にペルーのリマで開催されたU20世界選手権では、若い力が躍動。男子800mに出場した日本記録保持者の落合晃(滋賀学園高)が銅メダル。世界陸連主催の世界大会で、この種目でメダルを獲得するのは日本初の快挙だった。
男子棒高跳では吉田陸哉(関大)が5m40で銀メダルを獲得。男子走高跳では高校記録保持者の中谷魁聖(福岡第一高)が2m19で銅メダルを獲得した。
秋季以降も快挙に沸く
競歩では男子20㎞、男子35㎞で世界新が誕生
秋も海外から快挙の報せが届く。9月13、14日にベルギー・ブリュッセルで開催されたダイヤモンドリーグ・ファイナルに日本勢は5人が出場。女子やり投では、北口が最終投てきでシーズンベストとなる66m13を投げて逆転で優勝し、2年連続で年間チャンピオンに輝いた。
男子やり投ではディーン元気(ミズノ)が5位に入った。男子100mのサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)、男子110mハードルの泉谷、女子5000mの田中希実(New Balance)は、それぞれ6位だった。
9月29日のベルリン・マラソンでは、男女ともに好記録。男子は池田耀平(Kao)が日本歴代2位の2時間5分12秒で6位に入賞。女子は細田あい(エディオン)が日本歴代7位の2時間20分31秒で5位、松田瑞生(ダイハツ)が日本歴代8位の2時間20分42秒で6位に入った。
「国民体育大会」から名称を改めた「国民スポーツ大会」(10月11日~15日、佐賀)では、男女の300mで日本新記録が誕生した。男子は、優勝した今泉堅太(Team SSP)が予選で32秒20をマーク。女子は、ペルー国籍のフロレス・アリエ(日体大)が36秒79の国内最高で優勝し、2位の松本奈菜子(東邦銀行)が36秒93を出して日本記録保持者となった。
競歩では特大記録が続出。10月27日の全日本35km競歩高畠大会で、川野将虎(旭化成)が快挙。2時間21分47秒の世界新記録を樹立して優勝し、東京世界選手権の内定第1号となった。
年が明けて2025年2月16日の日本選手権20km競歩の男子では、山西利和(愛知製鋼)が1時間16分10秒の世界新記録を樹立した。女子は藤井菜々子(エディオン)が、1時間26分33秒の日本新記録を打ち立てて3連覇を果たした。

日本選手権20km競歩 山西利和 ©月刊陸上競技

日本選手権20km競歩 山西利和 ©月刊陸上競技
マラソンでも好記録が続く。12月1日の福岡国際マラソンでは吉田祐也(GMOインターネットグループ)が日本歴代3位の2時間5分16秒で4年ぶりの優勝を飾った。
年が明けて、1月26日の大阪国際女子マラソンでは、サークル出身という異例の経歴を持つ社会人1年目の小林香菜(大塚製薬)が、日本歴代10位の2時間21分19秒で日本人トップの2位に入った。パリ五輪6位の鈴木優花(第一生命グループ)も3位に入り、自己記録を大幅に更新する2時間21分33秒の好記録だった。
2月2日の別府大分毎日マラソンでは、大学卒業後は競技から離れることを表明していた若林宏樹(青学大)が、日本学生新記録、日本歴代7位となる2時間6分07秒で日本人トップの2位になった。
別大と同じ日、ハーフマラソンでも快挙。香川丸亀国際ハーフマラソンで、3位に入った太田智樹(トヨタ自動車)が59分27秒の日本新記録を打ち立てた。4位の篠原倖太朗(駒大)も従来の日本記録を上回る59分30秒で走り、日本学生新記録を樹立した。これまで日本勢には1時間の壁が立ちはだかっていたが、一気に2人が59分台に突入した。
また、併催の日本学生ハーフマラソン選手権を制した工藤慎作(早大)も1時間0分06秒と、日本歴代4位タイの好記録をマークした。女子も5位の加世田梨花(ダイハツ)が日本歴代4位の1時間7分53秒をマークした。
さらに、2月24日の大阪マラソンでは、近藤亮太(三菱重工)が初マラソン日本最高、日本歴代5位となる2時間5分39秒で日本人最上位の2位に入った。6位の黒田朝日(青学大)は、先輩の若林の記録を上回り、2時間6分05秒の学生新記録を打ち立てた。
室内競技会でも好記録ラッシュ。2月8日にチェコで開催されたフストペチェ・ジャンプでは、高橋渚(センコー)が1m92で2位に入った。この記録は、日本歴代5位タイで、39年ぶりの室内日本人最高記録だった。
女子中長距離の田中希実(New Balance)はアメリカで転戦し、1月31日にボストン大で開かれた競技会の1000mでは2分39秒06で1着。2日後のニューバランスGP1マイルでは4分28秒54で6位。いずれもショートトラックの日本新記録だった。2月8日のミルローズ・ゲームは3000mで、屋外の日本記録をも上回る8分33秒52で6位。2月15日のボストン大デヴィッド・ヘメリー・バレンタイン招待5000mではショートトラック日本初の14分台となる14分51秒26と、4戦連続でショート日本新をマークした。
ヨーロッパで室内を転戦した100mハードルの田中佑美(富士通)は、60mハードルで好記録を連発。2月8日にフランス・メッスで開かれた大会で8秒00の日本新を樹立した。
女子400mの松本奈菜子(東邦銀行)もショート日本新を連発し、3月1日にカザフスタンで53秒15を叩き出した。
また、男子中距離では、樋口諒(カンザス大)が1000mで2分21秒51のショート日本新を樹立。800mは日本新の応酬となった。2月8日に金子魅玖人(ARCYELL)が1分47秒16をマークすると、その2週間後には石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41に更新した。
記事提供:月刊陸上競技


