日本陸上競技連盟史
2019年度
2019年度
平成30年4月~令和2年3月
春から好記録ラッシュ、サニブラウンが100m日本新
時代が平成から5月1日をもって令和へと移り変わるこの年、1964年以来2度目となる東京五輪を1年後に控え、陸上界は活気に満ち溢れていく。
まず、日本が誇る「世界記録保持者」が長いトンネルを抜けて復活を果たした。第103回日本選手権50km競歩(石川・輪島)で、この種目初挑戦の鈴木雄介(富士通)が3時間39分07秒の日本新で優勝を飾り、今秋のドーハ世界選手権(9月27日~10月6日/カタール)の日本代表に内定した。2015年に男子20km競歩の世界記録(1時間16分36秒)を樹立したが、北京世界選手権を途中棄権。その後は両恥骨疲労骨折をはじめ股関節周辺の痛みに苦しみ、2年半以上もレースから遠ざかった。周囲の助け、支えを受けたそれを乗り越え、世界の舞台に返り咲いた31歳は、「世界で金を取ったら完全復活」と冷静に自身の立ち位置を見つめる。なお、これが平成最後の日本新となった。
トラック&フィールド勢は、4月21日から24日の4日間、カタール・ドーハで行われた第23回アジア選手権にまずピークを合わせた。今秋に控える世界選手権の開催地であり、同じハリーファ国際スタジアムで実施されること、エリアチャンピオンとして世界選手権標準記録突破と同等の資格が得られること、東京五輪出場資格獲得のために導入されるワールドランキングのポイントに大きく関わるとして、日本代表にはトップ選手たちがずらり集結。5つの金メダルをはじめ、銀4、銅9のメダルを獲得した。
男子走幅跳では20歳の橋岡優輝(日大)が8m22(+0.5)をマークし、金メダルに輝く。指導を受ける森長正樹コーチが1992年に作った日本記録まであと3cmの日本歴代2位、海外日本人最高となる大ジャンプで、ドーハ世界選手権参加標準記録(8m17)を突破した。男子100mでは桐生祥秀(日本生命)が10秒10(+1.5)で同種目日本勢初優勝。自身にとっても初の国際タイトルだった。桐生はこれで2度目の参加標準記録(10秒10)突破。
男子十種競技の右代啓祐(国士舘クラブ)、女子100mハードルの木村文子(エディオン)も金メダルを手にし、世界選手権標準記録突破と同等の資格を得た。男子4×400mリレーは3分02秒94で優勝したほか、女子10000mでは新谷仁美(NIKE TOKYO TC)が東京五輪参加標準記録(31分25秒00)を突破する31分22秒63で銀メダル、男子走高跳では衛藤昂(味の素AGF)が世界選手権参加標準でもある自己ベストにあと1cmの2m29をクリアして2位を占めた。衛藤は帰国後、5月3日の第35回静岡国際(小笠山総合)で2m30をクリアした。
国内に舞台を移すと、5月6日の第6回木南記念の女子やり投で北口榛花(日大)が64m36の日本新記録を打ち立てた。世界選手権(61m50)、さらには東京五輪(64m00)の参加標準記録をも突破する大アーチ。2015年世界ユース選手権で金メダルに輝いた大器が、令和最初の日本新を生み出す。
そして、日本で初開催となった世界リレーを迎えた。国際陸連(IAAF)主催のリレー世界一を決める世界リレーの第4回大会が5月11日~12日、神奈川県横浜市の横浜国際総合競技場で開催。男女の4×100m、4×200m、4×400mと、男女混合の4×400m、2×2×400m、シャトルハードルの計9種目で熱戦が繰り広げられた。また、男女4×100mと4×400m(上位10ヵ国)、および男女混合4×400m(上位12ヵ国)はドーハ世界選手権出場権を懸けて行われ、日本は男子4×100m予選でまさかの失格を喫したものの、男子4×400mで4位、男女混合4×400mで予選総合11位に食い込み、世界選手権出場権を獲得。男女混合のシャトルハードルと2×2×400mはそれぞれ2位、3位に食い込むなど、地元大会を大いに沸かせた。各種目のポイントで争う国別対抗の「ゴールデンバトン」は米国が他を圧倒して獲得した。
世界リレーで失格となった男子4継陣だが、5月19日のセイコーゴールデングランプリ大阪(ヤンマースタジアム長居)で雪辱の場があった。世界リレーと同じ多田修平(住友電工)、山縣亮太(セイコー)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)のオーダーで、38秒00と快勝。その1時間半前に個人の100mを戦い、桐生は10秒01(+1.7)をマークしてジャスティン・ガトリン(米国)に0.01秒差と食い下がるなどそれぞれに力走したばかり。その中での好タイムに、詰めかけた観衆から大歓声が沸く。また、個人でインパクトを残したのが男子110mハードルの泉谷駿介(順大)。追い風参考ながら日本記録を0.1秒も上回る13秒26(+2.9)の快走は、高速化が進みつつあるこの種目の起爆剤となっていく。
大会後、同じ会場で第103回日本選手権10000mが行われ、女子10000mは鍋島莉奈、鈴木亜由子の日本郵政グループコンビがワン・ツー。鍋島が31分44秒02で、前回の5000mに続く日本選手権者に。鈴木も31分46秒25で3年連続の2位を占めた。3位は31分50秒43で新谷仁美(NIKE TOKYO TC)が入った。男子10000mは田村和希(住友電工)が28分13秒39で初優勝を果たした。
すでに活況のなか、海外からは衝撃のニュースが届く。サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)が6月5日~8日の全米学生選手権で爆走を連発したのだ。初日に4×100mリレー、100m、200mの予選を1時間置きに走り、中1日空けた3日目に、同じ順番で、さらに短時間で決勝を行うスケジュール。その中で3日目に4×100mリレーは2走として、全米学生新(37秒97)での優勝に貢献すると、5月の地区予選で自身初の9秒台(9秒99)に入った100mで9秒97(+0.8)の日本新記録をマークする。さらに200mでは、末續慎吾の日本記録にあと0.05秒と迫る歴代2位の20秒08(+0.8)。それでも、「まだ速いタイムを出せる」と手応えを口にした。
ムード最高潮の中で、いよいよシーズン前半の大一番、日本選手権を迎える。
サニブラウンが2年ぶり2冠で存在感、北口も快投
第103回日本選手権は6月27日~30日の4日間、福岡市の博多の森陸上競技場で行われた。福岡での開催は実に72年ぶりで、第82回(1998年)の熊本大会以来21年ぶりの九州開催。連日の雨模様を吹き飛ばすような熱狂を生み出したのが、男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)だった。2年ぶりの100m、200m2冠と、男子MVPに輝く。
前半に行われた100mは準決勝で早くも10秒05(+0.1)の大会タイ記録をマークすると、2日目午後8時半から行われた決勝は10秒02(-0.3)の大会新で2年ぶりの優勝を飾った。3日目からは200m。予選を20秒84(-1.8)で悠々1着通過すると、最終日の決勝を20秒35(-1.3)で快勝し、2種目制覇を成し遂げた。100mは2位が桐生祥秀(日本生命)、3位が小池祐貴(住友電工)、200mは2位が小池、3位が桐生と同学年コンビが占めた。
女子やり投は、春に日本記録保持者となった北口榛花(日大)が63m68の大会新をマークして初優勝。女子最優秀選手に選出された。この優勝で初のシニア世界大会代表を手中に収めた。
激しい雨の中で行われた男子110mハードルは高山峻野(ゼンリン)と泉谷駿介(順大)が13秒36(-0.6)の日本タイ・大会タイ。同記録着差ありで、高山が2年ぶり3回目の優勝を飾り、ともにドーハ世界選手権代表に決定した。他のハードル種目もハイレベルとなったほか、男子800mをクレイ・アーロン竜波(相洋高3神奈川)がU20日本新の1分46秒59で初制覇するなど若手も台頭。秋のドーハや、来年の東京への機運がどんどん高まっていく。
その1週前、第103回日本選手権混成競技は6月8日~9日、長野・長野市営競技場で行われ、右代啓祐(国士舘クラブ)が7847点で、女子七種競技は山﨑有紀(スズキ浜松AC)が5696点(追い風参考)でともに2連覇を達成した。
7月からも好記録ラッシュは続く
7月に入ると、選手たちは海外へと挑戦の場を移す。7月2日~14日に第30回ユニバーシアードがイタリア・ナポリで開催され、陸上競技は7月8日~13日に実施。男子走幅跳で橋岡優輝(日大)が8m01(+0.2)で制し、1967年東京大会の阿部直紀(順大)以来52年ぶりの金メダルに輝いた。男子4×100mリレーは宮本大輔(東洋大)、染谷佳大(中大)、山下潤(筑波大)、デーデー・ブルーノ(東海大)のオーダーで3連覇を達成。ハーフマラソンは男子が相澤晃(東洋大)、女子は鈴木優花(大東大)が制覇したほか、男女ともにメダル独占と他国を圧倒した。男子20km競歩も池田向希、川野将虎(ともに東洋大)、古賀友太(明大)で表彰台を独占し、女子やり投の北口榛花(日大)が銀、男子110mハードルの泉谷駿介(順大)が銅など、金8(団体含む)、銀6、銅5と、2年前の台北大会(16個)を上回る過去最多19個のメダルを獲得した。
男子短距離陣は、日本陸連としての強化の一環で欧州に渡り、個々がレースを重ねたあと、7月21日のダイヤモンドリーグ(DL)・ロンドン大会の4×100mリレーで記録を狙う、ドーハ世界選手権出場を確定させるプランを進める。その流れの中で、日本人3人目の9秒台スプリンターが誕生した。DLロンドンの100m決勝、4位に食い込んだ小池祐貴(住友電工)が9秒98(++0.5)をマークした。同学年の桐生祥秀(日本生命/当時・東洋大)に並ぶ日本歴代2位の快走にも、「これが限界じゃない」とさらなる高みを見据えた。4×100mリレーは多田修平(住友電工)、小池、桐生、白石黄良々(セレスポ)のオーダーで日本歴代2位・パフォーマンス日本歴代3位の37秒78を叩き出し、地元・英国に0.18秒差の2位を占めた。
7月27日の第59回実業団・学生対抗の男子110mハードルでは高山峻野(ゼンリン)が13秒30(+1.9)をマークし、13秒36で3人で並んでいた日本記録保持者の座から一歩リードする。
8月に入ると、好記録ラッシュは加速する。新設されたAthlete Night Games in FUKUI(福井)の男子走幅跳では、歴史に残る空中戦が繰り広げられた。1回目に橋岡が27年ぶり日本新となる8m32(+1.6)をマークすると、およそ30分後、3回目に城山正太郎(ゼンリン)が8m40(+1.5)の大ジャンプを見せた。さらに、津波響樹(東洋大)も8m23(+0.6)。3人そろって東京五輪の参加標準記録(8m22)を突破した。男子110mハードルでは高山が自身の日本記録を13秒25(+1.1)へと短縮。この競技場の愛称「9.98スタジアム」の由来となった9秒98を2017年の日本インカレで出した桐生も凱旋し、同じ5レーンを走って10秒05(+0.9)を記録。このほかにも歴代上位記録が続出し、九ラウンドファンディングを活用し、招待選手の旅費や賞金に充てるという新しい試みの大会は、“奇跡の夜”として大きなインパクトを残した。
9月1日の富士北麓ワールドトライアルの女子100mハードルでは、寺田明日香(パソナグループ)が日本人初の13秒切りとなる12秒97(+1.2)を叩き出した。2013年に陸上を離れ、結婚、出産、7人制ラグビーへの挑戦を経て、今季から陸上に復帰した29歳が、この種目の歴史を動かした。
東京五輪マラソン代表選考レース「MGC」開催
9月15日、日本陸上界にとって画期的なレースが開催された。2020年東京五輪マラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」。これまで、何度も物議を醸してきたマラソンの五輪選考を、最も公平な“一発勝負”へと近づける。その一歩がこのレースである。
MGCへの出場権を懸けたMGCシリーズが2017年8月の北海道を皮切り、19年4月末まで行われ、男子34名、女子15名が出場権を獲得。そのうち男子男子31名、女子12名がエントリーし、棄権者が出てスタートラインに立ったのは男子30名、女子10名。東京・渋谷区の明治神宮外苑いちょう並木をスタート・フィニッシュとし、この発着点以外は東京五輪本番と同様のコースで行われた。早朝から気温がグングンと上がり、午前8時50分に男子、20分後に女子の〝決戦〟の始まりを告げる号砲が鳴り響き、選手たちは一斉に東京の街へ飛び出す。
男子はスタートした後、すぐに飛び出した設楽悠太(Honda)を、37km過ぎに後続集団が吸収。その中から39.2kmでスパートした中村匠吾(富士通)が、日本記録保持者・大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)に1度は追いつかれながらも41kmの2度目のスパートで突き放し、2時間11分28秒で優勝。終盤に大迫をかわした服部勇馬(トヨタ自動車)が8秒差で2位に続き、ともに自身初の五輪代表内定を決めた。大迫は2時間11分41秒で3位。4位は大塚祥平(九電工)、5位は橋本崚(GMOアスリーツ)だった。
最初の5kmを16分31秒のハイペースで入った女子は、15km過ぎから集団をリードした前田穂南(天満屋)が徐々に集団の人数を削り、最後まで残った鈴木亜由子(日本郵政グループ)も19km過ぎに引き離して独走。2時間25分15秒の好タイムで制し、自身としては初、チームとしては2大会ぶり5度目の五輪代表の座をつかんだ。2時間29分02秒で2位の鈴木は2大会連続、マラソンでは初の五輪代表に内定。4秒差で小原怜(天満屋)が3位に続き、本命候補だった松田瑞生(ダイハツ)が4位、野上恵子(十八銀行)が5位に入った。
男女の残る1枠は、男子は12月の福岡国際、女子は1月の大阪国際女子から始まるMGCファイナルチャレンジを経て決定となる。
灼熱のドーハで世界選手権開催 男子競歩で2つの金
9月27日から10月6日、カタールの首都ドーハで第17回世界選手権が開催された。中東での世界陸上開催は初。日本は男子40名、女子20名で世界に挑み、金メダル2つ、銅メダル1つを含む入賞8となった。
大会2日目に行われた男子50km競歩で鈴木雄介(富士通)が圧巻の歩きを見せる。暑さ対策として現地時間の深夜11時30分スタートとなったが、それでもスタート時の気温は30度を超え、湿度も74%の酷暑。鈴木は序盤から先頭に立ち、一度もトップを譲ることなく、4時間4分20秒で完勝した。競歩では五輪を含めても日本人初の世界大会金メダリストに。だが、あまりに過酷なレースだったことから、鈴木の第一声は「実感が湧かないですね。ゴールするのに必死だったので。一番はゴールできたという安堵です」と振り返った。
大会8日目の男子20km競歩では、初出場の山西利和(愛知製鋼)が続く。10km付近で独歩態勢を築いていた山西が1時間26分24秒で、20km競歩では日本史上初の金メダルを獲得した。。男子競歩で20kmと50kmで金メダルを独占したのは、1993年シュツットガルト大会のスペイン以来、2度目の快挙。山西を追って上位で展開した池田向希(東洋大)が1時間29分02秒で6位に入賞した。
女子20km競歩には3大会連続3回目の出場となる岡田久美子(ビックカメラ)と、初の世界陸上となった藤井菜々子(エディオン)が出場。当初は23時30分スタートだったが、気象状況を鑑みてスタート時間を約30分遅らせ、23時59分にスタートするという異例の競技時間となる中、日本記録保持者の岡田が1時間34分36秒で6位、藤井も1時間34分50秒で7位となり、日本女子競歩勢で史上初のダブル入賞を果たした。
男子100m準決勝には、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)と3選手が進出したものの、決勝へは駒を進められず。男子4×100mリレーでのリベンジが期待された。
大会8日目に行われた同リレー予選は、1走から小池、白石黄良々(セレスポ)、桐生、サニブラウンというオーダー。3走の桐生で3着争いをした日本は、アンカーのサニブラウンが2着に入り、全体3番目の記録となる37秒78で決勝進出を決めた。決勝は1走を多田修平(住友電工)に変更。その多田が好スタートを切り、決勝でも3走の桐生でメダル争いに浮上する。アンカーのサニブラウンがトップの米国を追いながら3着でフィニッシュ。アジア新記録、日本新記録となる37秒43で銅メダルを獲得した。
大会初日に行われた男子走幅跳予選には、日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)、橋岡優輝(日大)、津波響樹(東洋大)と初出場の3選手が臨んだ。城山が7m94(±0)で全体8位、橋岡が8m07(-0.7)で全体3番目の記録をマークして決勝へ進んだ。翌日の決勝では、橋岡が3回目に8番手に滑り込む7m97(-0.2)をマーク。残り3回の試技で記録を伸ばすことはできなかったが、この種目で日本勢初の入賞を果たした。この大会で最初の決勝種目となった女子マラソンでは谷本観月(天満屋)が常に入賞圏内でレースを展開し、2時間39分09秒で7位。日本女子マラソンとしては2大会ぶりの入賞となった。
東京五輪代表選考会を兼ねた第58回全日本競歩高畠大会の男子50kmで川野将虎(東洋大)が3時間36分45秒の日本新をマーク。派遣設定記録(3時間45分00秒)を突破し、初の五輪代表に内定した。2位の丸尾知司(愛知製鋼)も3時間37分39秒の日本新をマークした。
MGCファイナルチャレンジで大迫が日本新
東京五輪のマラソン代表選考は、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を経て、いよいよ残る1枠を決めるMGCファイナルチャレンジへ突入。MGCファイナルチャレンジで派遣設定記録(男子2時間5分49秒、女子2時間22分22秒)を上回った最も速い選手か、突破者がいなければMGC3位の選手が五輪代表に内定する。
まず、女子の選考が動き、1月26日の大阪国際女子で松田瑞生(ダイハツ)が2時間21分47秒をマークして設定記録を突破した。
男子では3月1日の東京で、MGC3位の大迫傑(Nike)が決定打。自身の日本記録(2時間5分50秒)を21秒短縮する2時間5分29秒をマークした。結果的に大迫以外の派遣設定記録突破者は出なかったのだが、自らの手で2大会連続、マラソンでは初の五輪代表の座をつかみ取った。
そして、女子も決まる。最終選考レースとなった3月8日の名古屋ウィメンズで一山麻緒(ワコール)が日本人国内最高タイムの2時間20分29秒で優勝。松田の記録を上回り、3枠目の五輪代表に内定した。
この結果、代表候補選手(補欠競技者)はMGC上位選手から選考される基準となっており、男子は4位、5位の大塚祥平(九電工)と橋本崚(GMOインターネットグループ)、女子は3位、4位の小原怜(天満屋)と松田が該当している。
競歩の五輪選考レースも行われ、2月16日に兵庫県神戸市の六甲アイランド甲南大周辺コースで開かれた第103回日本選手権20km競歩は、女子は岡田久美子(ビックカメラ)が1時間29分56秒で6連覇を達成。派遣設定記録(1時間30分00秒)を突破済みで、2大会連続の五輪代表に内定した。男子はドーハ世界選手権金メダルですでに内定済みの山西利和(愛知製鋼)が1時間17分36秒で初優勝した。
男子20km競歩の最終選考会となった第44回全日本競歩能美大会(3月15日)では、男子は池田向希(東洋大)が派遣設定記録(1時間20分00秒)を突破する1時間18分22秒で制し、初の五輪代表に内定。女子は藤井菜々子(エディオン)が1時間33分20秒で制覇、すでに派遣設定記録突破済みでこちらも初の五輪代表入りを決めた。
大盛況となった2019年度だが、年が明ける頃から世界中に不穏な空気が漂いはじめ、かつて経験したことのない時代を迎えることになる。
記事提供:月刊陸上競技
平成30年4月~令和2年3月
春から好記録ラッシュ、サニブラウンが100m日本新
時代が平成から5月1日をもって令和へと移り変わるこの年、1964年以来2度目となる東京五輪を1年後に控え、陸上界は活気に満ち溢れていく。
まず、日本が誇る「世界記録保持者」が長いトンネルを抜けて復活を果たした。第103回日本選手権50km競歩(石川・輪島)で、この種目初挑戦の鈴木雄介(富士通)が3時間39分07秒の日本新で優勝を飾り、今秋のドーハ世界選手権(9月27日~10月6日/カタール)の日本代表に内定した。2015年に男子20km競歩の世界記録(1時間16分36秒)を樹立したが、北京世界選手権を途中棄権。その後は両恥骨疲労骨折をはじめ股関節周辺の痛みに苦しみ、2年半以上もレースから遠ざかった。周囲の助け、支えを受けたそれを乗り越え、世界の舞台に返り咲いた31歳は、「世界で金を取ったら完全復活」と冷静に自身の立ち位置を見つめる。なお、これが平成最後の日本新となった。
トラック&フィールド勢は、4月21日から24日の4日間、カタール・ドーハで行われた第23回アジア選手権にまずピークを合わせた。今秋に控える世界選手権の開催地であり、同じハリーファ国際スタジアムで実施されること、エリアチャンピオンとして世界選手権標準記録突破と同等の資格が得られること、東京五輪出場資格獲得のために導入されるワールドランキングのポイントに大きく関わるとして、日本代表にはトップ選手たちがずらり集結。5つの金メダルをはじめ、銀4、銅9のメダルを獲得した。
男子走幅跳では20歳の橋岡優輝(日大)が8m22(+0.5)をマークし、金メダルに輝く。指導を受ける森長正樹コーチが1992年に作った日本記録まであと3cmの日本歴代2位、海外日本人最高となる大ジャンプで、ドーハ世界選手権参加標準記録(8m17)を突破した。男子100mでは桐生祥秀(日本生命)が10秒10(+1.5)で同種目日本勢初優勝。自身にとっても初の国際タイトルだった。桐生はこれで2度目の参加標準記録(10秒10)突破。
男子十種競技の右代啓祐(国士舘クラブ)、女子100mハードルの木村文子(エディオン)も金メダルを手にし、世界選手権標準記録突破と同等の資格を得た。男子4×400mリレーは3分02秒94で優勝したほか、女子10000mでは新谷仁美(NIKE TOKYO TC)が東京五輪参加標準記録(31分25秒00)を突破する31分22秒63で銀メダル、男子走高跳では衛藤昂(味の素AGF)が世界選手権参加標準でもある自己ベストにあと1cmの2m29をクリアして2位を占めた。衛藤は帰国後、5月3日の第35回静岡国際(小笠山総合)で2m30をクリアした。
国内に舞台を移すと、5月6日の第6回木南記念の女子やり投で北口榛花(日大)が64m36の日本新記録を打ち立てた。世界選手権(61m50)、さらには東京五輪(64m00)の参加標準記録をも突破する大アーチ。2015年世界ユース選手権で金メダルに輝いた大器が、令和最初の日本新を生み出す。
そして、日本で初開催となった世界リレーを迎えた。国際陸連(IAAF)主催のリレー世界一を決める世界リレーの第4回大会が5月11日~12日、神奈川県横浜市の横浜国際総合競技場で開催。男女の4×100m、4×200m、4×400mと、男女混合の4×400m、2×2×400m、シャトルハードルの計9種目で熱戦が繰り広げられた。また、男女4×100mと4×400m(上位10ヵ国)、および男女混合4×400m(上位12ヵ国)はドーハ世界選手権出場権を懸けて行われ、日本は男子4×100m予選でまさかの失格を喫したものの、男子4×400mで4位、男女混合4×400mで予選総合11位に食い込み、世界選手権出場権を獲得。男女混合のシャトルハードルと2×2×400mはそれぞれ2位、3位に食い込むなど、地元大会を大いに沸かせた。各種目のポイントで争う国別対抗の「ゴールデンバトン」は米国が他を圧倒して獲得した。

世界リレー横浜大会 ©月刊陸上競技
世界リレーで失格となった男子4継陣だが、5月19日のセイコーゴールデングランプリ大阪(ヤンマースタジアム長居)で雪辱の場があった。世界リレーと同じ多田修平(住友電工)、山縣亮太(セイコー)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)のオーダーで、38秒00と快勝。その1時間半前に個人の100mを戦い、桐生は10秒01(+1.7)をマークしてジャスティン・ガトリン(米国)に0.01秒差と食い下がるなどそれぞれに力走したばかり。その中での好タイムに、詰めかけた観衆から大歓声が沸く。また、個人でインパクトを残したのが男子110mハードルの泉谷駿介(順大)。追い風参考ながら日本記録を0.1秒も上回る13秒26(+2.9)の快走は、高速化が進みつつあるこの種目の起爆剤となっていく。
大会後、同じ会場で第103回日本選手権10000mが行われ、女子10000mは鍋島莉奈、鈴木亜由子の日本郵政グループコンビがワン・ツー。鍋島が31分44秒02で、前回の5000mに続く日本選手権者に。鈴木も31分46秒25で3年連続の2位を占めた。3位は31分50秒43で新谷仁美(NIKE TOKYO TC)が入った。男子10000mは田村和希(住友電工)が28分13秒39で初優勝を果たした。
すでに活況のなか、海外からは衝撃のニュースが届く。サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)が6月5日~8日の全米学生選手権で爆走を連発したのだ。初日に4×100mリレー、100m、200mの予選を1時間置きに走り、中1日空けた3日目に、同じ順番で、さらに短時間で決勝を行うスケジュール。その中で3日目に4×100mリレーは2走として、全米学生新(37秒97)での優勝に貢献すると、5月の地区予選で自身初の9秒台(9秒99)に入った100mで9秒97(+0.8)の日本新記録をマークする。さらに200mでは、末續慎吾の日本記録にあと0.05秒と迫る歴代2位の20秒08(+0.8)。それでも、「まだ速いタイムを出せる」と手応えを口にした。
ムード最高潮の中で、いよいよシーズン前半の大一番、日本選手権を迎える。
サニブラウンが2年ぶり2冠で存在感、北口も快投
第103回日本選手権は6月27日~30日の4日間、福岡市の博多の森陸上競技場で行われた。福岡での開催は実に72年ぶりで、第82回(1998年)の熊本大会以来21年ぶりの九州開催。連日の雨模様を吹き飛ばすような熱狂を生み出したのが、男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)だった。2年ぶりの100m、200m2冠と、男子MVPに輝く。
前半に行われた100mは準決勝で早くも10秒05(+0.1)の大会タイ記録をマークすると、2日目午後8時半から行われた決勝は10秒02(-0.3)の大会新で2年ぶりの優勝を飾った。3日目からは200m。予選を20秒84(-1.8)で悠々1着通過すると、最終日の決勝を20秒35(-1.3)で快勝し、2種目制覇を成し遂げた。100mは2位が桐生祥秀(日本生命)、3位が小池祐貴(住友電工)、200mは2位が小池、3位が桐生と同学年コンビが占めた。

日本選手権 男子100m決勝 ©月刊陸上競技
女子やり投は、春に日本記録保持者となった北口榛花(日大)が63m68の大会新をマークして初優勝。女子最優秀選手に選出された。この優勝で初のシニア世界大会代表を手中に収めた。
激しい雨の中で行われた男子110mハードルは高山峻野(ゼンリン)と泉谷駿介(順大)が13秒36(-0.6)の日本タイ・大会タイ。同記録着差ありで、高山が2年ぶり3回目の優勝を飾り、ともにドーハ世界選手権代表に決定した。他のハードル種目もハイレベルとなったほか、男子800mをクレイ・アーロン竜波(相洋高3神奈川)がU20日本新の1分46秒59で初制覇するなど若手も台頭。秋のドーハや、来年の東京への機運がどんどん高まっていく。
その1週前、第103回日本選手権混成競技は6月8日~9日、長野・長野市営競技場で行われ、右代啓祐(国士舘クラブ)が7847点で、女子七種競技は山﨑有紀(スズキ浜松AC)が5696点(追い風参考)でともに2連覇を達成した。
7月からも好記録ラッシュは続く
7月に入ると、選手たちは海外へと挑戦の場を移す。7月2日~14日に第30回ユニバーシアードがイタリア・ナポリで開催され、陸上競技は7月8日~13日に実施。男子走幅跳で橋岡優輝(日大)が8m01(+0.2)で制し、1967年東京大会の阿部直紀(順大)以来52年ぶりの金メダルに輝いた。男子4×100mリレーは宮本大輔(東洋大)、染谷佳大(中大)、山下潤(筑波大)、デーデー・ブルーノ(東海大)のオーダーで3連覇を達成。ハーフマラソンは男子が相澤晃(東洋大)、女子は鈴木優花(大東大)が制覇したほか、男女ともにメダル独占と他国を圧倒した。男子20km競歩も池田向希、川野将虎(ともに東洋大)、古賀友太(明大)で表彰台を独占し、女子やり投の北口榛花(日大)が銀、男子110mハードルの泉谷駿介(順大)が銅など、金8(団体含む)、銀6、銅5と、2年前の台北大会(16個)を上回る過去最多19個のメダルを獲得した。
男子短距離陣は、日本陸連としての強化の一環で欧州に渡り、個々がレースを重ねたあと、7月21日のダイヤモンドリーグ(DL)・ロンドン大会の4×100mリレーで記録を狙う、ドーハ世界選手権出場を確定させるプランを進める。その流れの中で、日本人3人目の9秒台スプリンターが誕生した。DLロンドンの100m決勝、4位に食い込んだ小池祐貴(住友電工)が9秒98(++0.5)をマークした。同学年の桐生祥秀(日本生命/当時・東洋大)に並ぶ日本歴代2位の快走にも、「これが限界じゃない」とさらなる高みを見据えた。4×100mリレーは多田修平(住友電工)、小池、桐生、白石黄良々(セレスポ)のオーダーで日本歴代2位・パフォーマンス日本歴代3位の37秒78を叩き出し、地元・英国に0.18秒差の2位を占めた。
7月27日の第59回実業団・学生対抗の男子110mハードルでは高山峻野(ゼンリン)が13秒30(+1.9)をマークし、13秒36で3人で並んでいた日本記録保持者の座から一歩リードする。
8月に入ると、好記録ラッシュは加速する。新設されたAthlete Night Games in FUKUI(福井)の男子走幅跳では、歴史に残る空中戦が繰り広げられた。1回目に橋岡が27年ぶり日本新となる8m32(+1.6)をマークすると、およそ30分後、3回目に城山正太郎(ゼンリン)が8m40(+1.5)の大ジャンプを見せた。さらに、津波響樹(東洋大)も8m23(+0.6)。3人そろって東京五輪の参加標準記録(8m22)を突破した。男子110mハードルでは高山が自身の日本記録を13秒25(+1.1)へと短縮。この競技場の愛称「9.98スタジアム」の由来となった9秒98を2017年の日本インカレで出した桐生も凱旋し、同じ5レーンを走って10秒05(+0.9)を記録。このほかにも歴代上位記録が続出し、九ラウンドファンディングを活用し、招待選手の旅費や賞金に充てるという新しい試みの大会は、“奇跡の夜”として大きなインパクトを残した。
9月1日の富士北麓ワールドトライアルの女子100mハードルでは、寺田明日香(パソナグループ)が日本人初の13秒切りとなる12秒97(+1.2)を叩き出した。2013年に陸上を離れ、結婚、出産、7人制ラグビーへの挑戦を経て、今季から陸上に復帰した29歳が、この種目の歴史を動かした。
東京五輪マラソン代表選考レース「MGC」開催
9月15日、日本陸上界にとって画期的なレースが開催された。2020年東京五輪マラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」。これまで、何度も物議を醸してきたマラソンの五輪選考を、最も公平な“一発勝負”へと近づける。その一歩がこのレースである。
MGCへの出場権を懸けたMGCシリーズが2017年8月の北海道を皮切り、19年4月末まで行われ、男子34名、女子15名が出場権を獲得。そのうち男子男子31名、女子12名がエントリーし、棄権者が出てスタートラインに立ったのは男子30名、女子10名。東京・渋谷区の明治神宮外苑いちょう並木をスタート・フィニッシュとし、この発着点以外は東京五輪本番と同様のコースで行われた。早朝から気温がグングンと上がり、午前8時50分に男子、20分後に女子の〝決戦〟の始まりを告げる号砲が鳴り響き、選手たちは一斉に東京の街へ飛び出す。

マラソングランドチャンピオンシップ ©月刊陸上競技
男子はスタートした後、すぐに飛び出した設楽悠太(Honda)を、37km過ぎに後続集団が吸収。その中から39.2kmでスパートした中村匠吾(富士通)が、日本記録保持者・大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)に1度は追いつかれながらも41kmの2度目のスパートで突き放し、2時間11分28秒で優勝。終盤に大迫をかわした服部勇馬(トヨタ自動車)が8秒差で2位に続き、ともに自身初の五輪代表内定を決めた。大迫は2時間11分41秒で3位。4位は大塚祥平(九電工)、5位は橋本崚(GMOアスリーツ)だった。
最初の5kmを16分31秒のハイペースで入った女子は、15km過ぎから集団をリードした前田穂南(天満屋)が徐々に集団の人数を削り、最後まで残った鈴木亜由子(日本郵政グループ)も19km過ぎに引き離して独走。2時間25分15秒の好タイムで制し、自身としては初、チームとしては2大会ぶり5度目の五輪代表の座をつかんだ。2時間29分02秒で2位の鈴木は2大会連続、マラソンでは初の五輪代表に内定。4秒差で小原怜(天満屋)が3位に続き、本命候補だった松田瑞生(ダイハツ)が4位、野上恵子(十八銀行)が5位に入った。

マラソングランドチャンピオンシップ ©月刊陸上競技
男女の残る1枠は、男子は12月の福岡国際、女子は1月の大阪国際女子から始まるMGCファイナルチャレンジを経て決定となる。
灼熱のドーハで世界選手権開催 男子競歩で2つの金
9月27日から10月6日、カタールの首都ドーハで第17回世界選手権が開催された。中東での世界陸上開催は初。日本は男子40名、女子20名で世界に挑み、金メダル2つ、銅メダル1つを含む入賞8となった。
大会2日目に行われた男子50km競歩で鈴木雄介(富士通)が圧巻の歩きを見せる。暑さ対策として現地時間の深夜11時30分スタートとなったが、それでもスタート時の気温は30度を超え、湿度も74%の酷暑。鈴木は序盤から先頭に立ち、一度もトップを譲ることなく、4時間4分20秒で完勝した。競歩では五輪を含めても日本人初の世界大会金メダリストに。だが、あまりに過酷なレースだったことから、鈴木の第一声は「実感が湧かないですね。ゴールするのに必死だったので。一番はゴールできたという安堵です」と振り返った。

ドーハ世界陸上 鈴木雄介 ©月刊陸上競技
大会8日目の男子20km競歩では、初出場の山西利和(愛知製鋼)が続く。10km付近で独歩態勢を築いていた山西が1時間26分24秒で、20km競歩では日本史上初の金メダルを獲得した。。男子競歩で20kmと50kmで金メダルを独占したのは、1993年シュツットガルト大会のスペイン以来、2度目の快挙。山西を追って上位で展開した池田向希(東洋大)が1時間29分02秒で6位に入賞した。

ドーハ世界陸上 山西利和 ©月刊陸上競技
女子20km競歩には3大会連続3回目の出場となる岡田久美子(ビックカメラ)と、初の世界陸上となった藤井菜々子(エディオン)が出場。当初は23時30分スタートだったが、気象状況を鑑みてスタート時間を約30分遅らせ、23時59分にスタートするという異例の競技時間となる中、日本記録保持者の岡田が1時間34分36秒で6位、藤井も1時間34分50秒で7位となり、日本女子競歩勢で史上初のダブル入賞を果たした。
男子100m準決勝には、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)と3選手が進出したものの、決勝へは駒を進められず。男子4×100mリレーでのリベンジが期待された。
大会8日目に行われた同リレー予選は、1走から小池、白石黄良々(セレスポ)、桐生、サニブラウンというオーダー。3走の桐生で3着争いをした日本は、アンカーのサニブラウンが2着に入り、全体3番目の記録となる37秒78で決勝進出を決めた。決勝は1走を多田修平(住友電工)に変更。その多田が好スタートを切り、決勝でも3走の桐生でメダル争いに浮上する。アンカーのサニブラウンがトップの米国を追いながら3着でフィニッシュ。アジア新記録、日本新記録となる37秒43で銅メダルを獲得した。
大会初日に行われた男子走幅跳予選には、日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)、橋岡優輝(日大)、津波響樹(東洋大)と初出場の3選手が臨んだ。城山が7m94(±0)で全体8位、橋岡が8m07(-0.7)で全体3番目の記録をマークして決勝へ進んだ。翌日の決勝では、橋岡が3回目に8番手に滑り込む7m97(-0.2)をマーク。残り3回の試技で記録を伸ばすことはできなかったが、この種目で日本勢初の入賞を果たした。この大会で最初の決勝種目となった女子マラソンでは谷本観月(天満屋)が常に入賞圏内でレースを展開し、2時間39分09秒で7位。日本女子マラソンとしては2大会ぶりの入賞となった。
東京五輪代表選考会を兼ねた第58回全日本競歩高畠大会の男子50kmで川野将虎(東洋大)が3時間36分45秒の日本新をマーク。派遣設定記録(3時間45分00秒)を突破し、初の五輪代表に内定した。2位の丸尾知司(愛知製鋼)も3時間37分39秒の日本新をマークした。
MGCファイナルチャレンジで大迫が日本新
東京五輪のマラソン代表選考は、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を経て、いよいよ残る1枠を決めるMGCファイナルチャレンジへ突入。MGCファイナルチャレンジで派遣設定記録(男子2時間5分49秒、女子2時間22分22秒)を上回った最も速い選手か、突破者がいなければMGC3位の選手が五輪代表に内定する。
まず、女子の選考が動き、1月26日の大阪国際女子で松田瑞生(ダイハツ)が2時間21分47秒をマークして設定記録を突破した。
男子では3月1日の東京で、MGC3位の大迫傑(Nike)が決定打。自身の日本記録(2時間5分50秒)を21秒短縮する2時間5分29秒をマークした。結果的に大迫以外の派遣設定記録突破者は出なかったのだが、自らの手で2大会連続、マラソンでは初の五輪代表の座をつかみ取った。

東京マラソン 大迫傑 ©月刊陸上競技
そして、女子も決まる。最終選考レースとなった3月8日の名古屋ウィメンズで一山麻緒(ワコール)が日本人国内最高タイムの2時間20分29秒で優勝。松田の記録を上回り、3枠目の五輪代表に内定した。
この結果、代表候補選手(補欠競技者)はMGC上位選手から選考される基準となっており、男子は4位、5位の大塚祥平(九電工)と橋本崚(GMOインターネットグループ)、女子は3位、4位の小原怜(天満屋)と松田が該当している。
競歩の五輪選考レースも行われ、2月16日に兵庫県神戸市の六甲アイランド甲南大周辺コースで開かれた第103回日本選手権20km競歩は、女子は岡田久美子(ビックカメラ)が1時間29分56秒で6連覇を達成。派遣設定記録(1時間30分00秒)を突破済みで、2大会連続の五輪代表に内定した。男子はドーハ世界選手権金メダルですでに内定済みの山西利和(愛知製鋼)が1時間17分36秒で初優勝した。
男子20km競歩の最終選考会となった第44回全日本競歩能美大会(3月15日)では、男子は池田向希(東洋大)が派遣設定記録(1時間20分00秒)を突破する1時間18分22秒で制し、初の五輪代表に内定。女子は藤井菜々子(エディオン)が1時間33分20秒で制覇、すでに派遣設定記録突破済みでこちらも初の五輪代表入りを決めた。
大盛況となった2019年度だが、年が明ける頃から世界中に不穏な空気が漂いはじめ、かつて経験したことのない時代を迎えることになる。
記事提供:月刊陸上競技


