田島直人
Tajima Naoto

1912年８月15日 生まれ、1990年12月４日死去
大阪府で出生、４歳から父の故郷である山口県玖珂郡岩国町（現在の岩国市）で育つ
旧制岩国中（山口県立岩国高の前身）→旧制山口高（山口大の前身）→京都帝国大（現・京大）→三井砂川鉱山



1936年ベルリン五輪の男子三段跳で優勝。織田幹雄、南部忠平に続き、日本に３大会連続の五輪金メダルをもたらし、「三段跳は日本のお家芸」と高く評価された。

２人の兄が岩国中時代から陸上選手として活躍していたり、兄が1928年アムステルダム五輪金メダリストの織田幹雄と親交があったりした影響を受けた。旧制山口高校では陸上競技部に所属。1929年の全国高校大会（旧制）で走幅跳に出場し、６ｍ83で優勝して注目されるようになった。1931年の同大会では100ｍと走幅跳で優勝、走高跳２位、棒高跳３位、三段跳４位と、身体能力の高さを示した。

1932年、日本選手権で三段跳優勝（14ｍ81）、走幅跳２位（７ｍ08）。ロサンゼルス五輪の切符をつかみ、走幅跳７ｍ15で6位入賞を果たした。1935年にはブダペスト国際学生大会の走幅跳で優勝した。

京都帝国大学経済学部を卒業後、1936年ベルリン五輪は跳躍２種目で出場。まず走幅跳で７ｍ74を記録し、銅メダルを獲得した。続く三段跳は、１回目に15ｍ76でトップに立ち、４回目に16ｍ00の世界新記録を樹立。この記録で金メダルに輝いた。同じ大学出身の原田正夫が15ｍ66で銀メダル、大島鎌吉も６位に入賞した。田島は史上初の16ｍジャンパーとなり、その後15年間、塗り替えられなかった。五輪記録映画「民族の祭典」の監督レニ・リーフェンシュタールは「あなたの三段跳は跳躍ではなく飛躍」と絶賛したという。

ベルリン五輪後、陸上選手の土倉麻と結婚。1932年ロサンゼルス五輪に出場した女子短距離選手で、日本初の五輪代表選手同士の結婚として話題になった。

戦地への出征も経験。現役引退後は日本陸上競技連盟常務理事をはじめ、日本オリンピック委員会（JOC）常任委員などを歴任。1956年メルボルン五輪は陸上日本代表コーチ、1964年東京五輪では陸上日本代表ヘッドコーチ、1972年ミュンヘン五輪本部役員(総務主事)を務めた。ドイツ語が堪能で、1969年から中京大学教授として教鞭をふるった。

1963年、紫綬褒章受章。1987年、勲三等端宝章受章。1990年にはlOC・オリンピックオーダー銀賞を受賞した。

功績を称え、後に続く選手の出現を願い、小中高校生の育成強化を兼ねた大会として、2004年から山口県で「田島直人記念陸上競技大会」が開催されている。

ベルリン五輪金メダルの副賞として贈られたオーク（樹種：ドイツカシワ）の鉢植えの苗木は、京都大学に植えられ、関係者の適切な管理によって、樹高20ｍを越える大樹に育った。この「オリンピック・オーク」は2008年に害虫に侵され伐採されたが、採れた実を発芽させて育てた苗木は、岩国高校や山口高校、中京大学豊田キャンパスなど、田島ゆかりの全国の地に植樹されている。

記事提供：月刊陸上競技